裁判所が決定 1日の民放番組に出演
クリスマスの賑いに包まれていたオーストラリア・シドニーの市民を一転して恐怖に陥れた2014年12月のカフェ立てこもり事件。人質2人が犠牲になった痛ましい事件の発生から10年を経て、実行犯のテロリストを射殺した元警官の実名が29日、ようやく公開された。
メディア大手ニューズ社のニュースサイトが29日に報じたところによると、銃を持ち人質を持って立てこもったマン・ハロン・モニス容疑者を撃ち殺したのは、当時ニューサウスウェールズ州警察のベン・ベサントさん。これまで、テロ組織の報復を避けるため実名公表が禁じられ、公開された資料や報道では「警官A」と呼ばれていた。
ベサントさんは実名の公表を望んでいた。民放「チャンネル7」が法的申し立てを進め、裁判所が解禁を認めた。ベサントさんは12月1日放映のチャンネル7のテレビ番組に出演する。ベサントさんは後遺症で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患って仕事を失い、離婚も経験した。ベサントさんは「名前を取り戻すことは私にとって非常に大きな課題だったんだ」と述べた。
事件は14年12月15日午前10時前、金融機関やオフィス、高級ブランド店などが立ち並ぶ中心街マーティン・プレースで発生した。モニス容疑者が通りの一角にある「リント・カフェ」に銃を持って侵入。店の客10人、従業員8人の合計18人を人質に取って立てこもった。
事件発生から約17時間が経過した16日午前2時13分ごろ、モニス容疑者がカフェの男性店長を銃殺。これを機に、ベサントさんら州警察の戦術作戦班が強行突入に踏み切った。激しい銃撃戦の末、客の女性1人が警官の銃弾を受けて死亡した。モニス容疑者も射殺された。
当時は中東で自称「イスラム国」(IS)が勢力を拡大していて、同調者によるテロがオーストラリアを含む世界各地で発生していた。モニス容疑者はテロ勢力と直接関係なく、宗教的な過激主義に傾倒した「一匹狼」(ローン・ウルフ)だったとされる。
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