売上高はコロナ前と比べ約2倍に
真夏のクリスマス商戦が本格化しているオーストラリア東部シドニー。中心部の商店街にあるカジュアル・シューズ店は、気に入った靴を試着する若者で賑わっている。だが、実際に買って帰る人は少ない。服や靴は実店舗で試着して自分にピッタリのサイズを見つけた上で、ネットで一番得な商品を探して購入する。そんな消費シーンが浸透しているようだ。
食品以外のオンライン売上は全体の約2割
ネット通販の巨人、米アマゾンの上陸(2017年)や後払い決済(バイ・ナウ・ペイ・レイター=BNPL)の登場を背景に、オーストラリアでは10年代後半からオンライン・ショッピングが浸透。20年以降のコロナ禍で普及が一気に加速した。ロックダウン(都市封鎖)の解除後も高水準で推移している。
オーストラリア統計局(ABS)によると、オンラインの小売売上高(月間)は、コロナ前19年10月の17億7,040万豪ドル(約1,770億円=季節調整済み)だった。コロナ感染拡大の渦中にあったピーク時の21年9月には43億4,430万豪ドルと約2.5倍に拡大した。経済再開後はやや落ち込んだものの、直近今年10月は41億280万豪ドルとコロナ前の2倍以上の水準を維持している。
小売売上高全体に占めるオンラインの割合も、19年10月の6.6%から21年9月に15.3%まで急拡大。今年10月は11.6%とコロナ前の2倍近い水準で推移している。特に「食品以外の商品」(17.8%)は2割近くに達し、「食品」(6.5%)を大きく上回っている。
需要は中高年層にシフト
一方、オーストラリア郵便局の別の調査によると、23年にオンライン・ショッピングを利用した世帯数は950万と全体の82%(前年比1.4%増)を占めた。売上高は636億豪ドル(1.2%減)だった。
世代別に見ると、18〜26歳の「ジェネレーションZ」が前年比11%減の106億豪ドル、27〜43歳の「ジェネレーションY」が2%減の221億豪ドルといずれも縮小した。これに対し、44〜59歳の「ジェネレーションX」は1%増の175億豪ドル、60〜78歳の「ベビーブーマーズ」(戦後のベビーブーム期に生まれた世代)は7%増の125億豪ドルとそれぞれ前年を上回った。
インフレや高金利による生活コスト高騰の影響で、オンライン・ショッピング需要はこれまで中心だった若年層から、購買力の高い中高年層にシフトしているようだ。
■ソース
2024 Inside Australian Online Shopping eCommerce Industry Report(Australia Post)