4年間の累計赤字は想定より2兆円上振れ
オーストラリア政府のバランスシート(賃借対照表)は、インフレや好調な税収の伸びを背景に2年度連続で単年度黒字を記録してきた。財政運営に悩む先進諸国の中では一番の優等生だが、今年度以降4年間は一転して赤字を計上する。赤字転落は既に今年5月発表の新年度予算案で明らかになっていて、新しいニュースではないが、赤字幅は2年目以降、従来の想定よりも大幅に拡大していく見通しだ。
オーストラリア連邦財務省が18日発表した年央経済・経済見通し(MYEFO)によると、2024-25年度(24年7月1日〜25年6月30日)の収入から支出を引いた財政収支(基礎的現金収支ベース)は269億豪ドル(約2兆6,000億円)の赤字となる。同年度の赤字幅は、所得税収の伸びに助けられ、予算案が想定していた283億豪ドルより14億豪ドル縮小する。
しかし、25-26年度以降は赤字幅が拡大し、27-28年度まで4会計年度の累計の赤字額は1,439億豪ドルと、5月時点の予算案の予測よりも218億豪ドル膨れ上がる。
ジム・チャーマーズ連邦財務相とケイティー・ギャラガー連邦予算相は同日開いた会見で、インフラ整備予算の拡大や家庭内暴力対策費、医療・高齢者ケア事業の延長など、予算案発表時と比較して「避けることのできない」支出が88億豪ドル上振れすると指摘した。送電網のインフラ建設や、メンタルヘルス関連事業、ウクライナ支援などの予算も追加計上する。
公共放送ABC(電子版)によると、チャーマーズ財務相は「インフレと生活コスト高騰への対策に引き続き注力するとともに、メディケア(国民健康保険制度)や医薬品、高齢者手当といった幅広い責務を無視することはできない」と述べ、当面は財政規律よりも国民生活への支援を優先せざるを得ないとの考えを示した。
■ソース
MID-YEAR ECONOMIC AND FISCAL OUTLOOK 2024-25(The Commonwealth of Australia)
Gloomier economy to shape election as government spends another $19 billion(ABC News)