船体に亀裂 JR九州小会社が隠蔽
JR九州子会社のJR九州高速船は23日、博多港と韓国の釜山港を結ぶオーストラリア製の高速船「クイーンビートル」の運行再開を断念すると発表した。コロナ禍後の就航からわずか2年で新型船の運用を終える。34年の歴史を持つ船舶事業からも撤退する。
JR九州は1990年、日韓間の船舶事業に参入し、水中翼船型の「ビートル」の運航を開始した。クイーンビートルは初代ビートルの後継船として、オーストラリアの造船大手「オースタル」が建造した。3つの船体が一体化した「トリマラン」と呼ばれる特殊な形状が特徴。全長83メートル、定員502席とビートルの約3倍の旅客を運べた。ビジネスクラス席も用意して競合する航空機に対抗した。
2020年9月に西オーストラリア州の造船所で進水し、同年10月に博多港に到着したが、コロナ禍で運休が続き、出端をくじかれた。2年前の22年11月になってようやく日韓航路に就航していた。
ところが、今年2月12日に船首部分に浸水が確認され、亀裂が発見されるトラブルが発生した。にもかかわらず、JR九州高速船は国土交通省に報告せず、トラブルを隠して運航を続けた。国土交通省による8月6日の監査で船体トラブルの事実が判明。8月13日に運休を決定していた。
同社は第三者委員会の調査報告書を踏まえ、隠蔽の再発防止策を発表するとともに、船体の改修による運行再開を目指した。しかし、23日の声明で「船体のクラック(亀裂)発生のリスクを完全に払拭することができないため、JR九州として運航再開に向けた確実な安全が担保できない」(同社記者発表)として、日韓航路と船舶事業からの完全撤退を正式に表明した。
■ソース
【お詫び】安全確保に関する重大な問題の発生について(JR九州高速船株式会社)
AUSTAL AUSTRALIA DELIVERS 83 METRE TRIMARAN FERRY TO JR KYUSHU JET FERRY(AUSTRAL LIMITED)