利下げで手取り増やしたい! オーストラリア連邦選挙に向け、与党は経済運営の成果強調

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「インフレとの戦いに大きく前進」とチャーマーズ財務相

 8日発表の11月の月次消費者物価指数(CPI)指標で、コアインフレ率が低下したことを受けて、中央銀行の豪準備銀(RBA)が2月に利下げを開始するとの観測が浮上している。2月の利下げは、選挙を半年以内に控えた連邦労働党政権にとっても政治的に都合が良い。利下げは減税と同じく、国民の手取りを増やす効果が期待できるからだ。

 オーストラリアでは全世帯のおおむね3分の1が借家住まい、3分の1が持ち家のローン支払い済み(または現金一括購入)、3分の1が持ち家のローン支払い中とされる。住宅ローンは変動金利型が主流であるため、利下げが国民生活や景気に与える影響は大きい。

 ジム・チャーマーズ連邦財務相は8日、CPI統計について「我々はインフレとの戦いにおいて非常に大きな前進を成し遂げた」と述べ、物価上昇に勝利しつつあるとの認識を示した。その上で、22年5月の政権奪回以降、前政権時に高まったインフレをいかに低下させたかを力説。「ピーター・ダットン(野党保守連合代表=自由党党首)の下ではオーストラリア国民は貧しくなる」と語り、22年まで政権の座にあった保守連合の経済政策に攻撃の矛先を向けた。

 中銀は金融政策の独立性が担保されているため、表向きには政府が口出しできないことになっている。だが、アンソニー・アルバニージー首相の与党労働党にしてみれば、選挙直前の利下げ開始を機に「インフレとの戦い」への勝利宣言を行った上で、選挙戦で有利に駒を進めたいはずだ。今後は選挙前の利下げを期待する政権と、インフレ再燃を懸念して利下げを躊躇する中銀のせめぎ合いが強まるかもしれない。

選挙までに中銀会合はあと2回

 下院の全議席と上院の約半数を改選する次期連邦選挙は規定上、今年5月17日までに実施される。最も遅く投票が行われると仮定した場合、選挙までにRBAが金融政策を決める会合を開くのは、2月17日〜18日、3月31日〜4月1日の2回しかない。その次の5月19日〜20日の会合は選挙後になる。

 選挙戦は、インフレや高金利による生活コスト高騰対策や、最大野党の保守連合が掲げる原発新設の是非などが争点になると見られる。各社の世論調査では、労働党は保守連合にリードを許している。労働党は下院(151議席)の過半数をわずか2議席上回っているにすぎないため、このまま支持率が低迷すれば議席を減らして少数政権となる公算がある。

 あるいは、保守連合が地すべり的勝利を収め、労働党は1期目で政権の座を追われる可能性も否定できない。ただ、オーストラリアの連邦政治では、与党が1期で政権を失った前例は、1931年以降90年以上もない。もし労働党政権が今年の選挙で下野すれば、第2次世界大戦後初の非常に稀なケースとなる。

■ソース

Australia’s core inflation slows, keeping door open to Feb rate cut(Reuters)

Underlying inflation down in new inflation numbers(The Hon Dr Jim Chalmers MP Treasurer)

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