連邦政府肝いりの海外労働力誘致政策で
毎年何万人もの海外からの若いバックパッカーが連邦政府の農場労働力誘致政策に応じて農場での仕事を求めて入っていくが、10年以上も前から問題になっていた最低賃金制度違反の低賃金や不当な宿舎・食事料金を差し引かれたり、また女性バックパッカーの場合には農場主らから性的な嫌がらせを受けるという事件が相変わらず跡を絶っていないことが報道された。
ABC放送(電子版)が伝えた。
ABC放送が報道の自由法(FOI)に基づいて入手したFair Work Ombudsman(FWO)の資料によると、昨年度の海外労働者関係の公式訴えは1,647件にのぼっており、そのうち約3分の1がバックパッカーを示す417サブクラス・ビザ所持者によるもので、オンブズマンの対応としては教育と紛争解消、または法制の遵守と強制執行という形だった。公式訴えの86%にあたる1,412件が教育および紛争解消で解決しており、14%だけが法制遵守と強制執行で解決している。FWOは、「強制執行が適用されたのは事案のうち3%程度で、11%は「法制遵守」を確保する他の手段で紛争を解消している。
「なぜ、大多数が教育手段で紛争を解消しているのか」という質問に対して、FWOの広報担当官は、「FWOは、問題が公式の紛争になる前に解消することを望んでいる。その方が、建設的で協力的な雇用関係を維持し、未払い賃金を迅速に獲得することができる」と答えている。
しかし、連邦政府が設立したMigrant Workers’ Taskforceを率いるアラン・フェルス元豪州競争消費者委員会(ACCC)委員長は、「FWOの資料で長年疑っていたことが事実と確認できた。FWOは教育に頼りすぎ、強制執行を有効に使っておらず、その結果、法律を十分に適用することを怠ってきた。Fair Work Ombudsmanという名前もとてもかわいらしい名前であり、厳しい法執行機関には聞こえない」と語っている。
さらに、「FWOは最近にはどん底から少しずつ改善してきているがまだまだ不足だ。オーストラリアのような豊かな国で海外からの若者を違法に働かせるようなことがあってもまともに法を適用しないというのはまったく恥ずかしい話だ」と語っている。
2015年にトニー・アボット保守連合連邦政権が発足させた制度で、バックパッカーがビザ延長を望む場合、農場で働いた実績を必要とするなどで、バックパッカーがいやいやながら農場経営者の無理難題に抵抗できない状況ができていたことは過去に報道されている。
また、2015年に導入された法制により、内務省は、農場で88日間働いてビザ延長資格ができても未払い賃金のバックパッカーのビザ延長を拒否できる。これは労働者が違法賃金に甘んじることを防ぐものだとしている。これに対して、奴隷的労働搾取摘発活動を進めているカソリック・シドニー大司教区Anti-Slavery Taskforceのアリソン・ラヒル氏は、「労働者に責任を求める政府の制度はアンフェアだ。不当賃金で搾取された上にビザも取り上げられることになる。しかし、それ以上に問題なのは一部の農場主の性的嫌がらせだ」と語っており、ABC放送は被害女性達の証言を伝えている。
■ソース
‘There are no human rights here’