政界こぼれ話人物編 その218
アンドリュー・ブロード国民党下院議員
Andrew Broad
VIC州選出の国民党連邦下院議員であるアンドリュー・ブロード(Andrew Broad)は、1975年7月2日にWA州のカーナボンで誕生している(43歳)。ブロードは若いころより農業に従事し、早くも22歳の時には自身の農地/牧羊地を購入。その後16年間にわたって、同農地で生産を続けた。ブロードは高等教育は受けていないものの、農業活動の期間中に調査奨学金を取得し、40カ国以上を訪問して現地の農業事情を調査、学習するなど、大いに見聞を広めている。
また活動的でリーダーシップを備え、「農業政治」にも大いに関心を抱いていたブロードは、30代半ばの3年間ほどにわたり、強力な農業圧力団体であるVIC州農業従事者連盟の会長を務めている。この圧力団体幹部としての経験が、ブロードに政界への進出を促す契機となった。
連邦政界入りは、アボット保守連合政権が誕生した2013年9月の選挙で、VIC州北西部に位置するマリー連邦下院選挙区から出馬し、見事初勝利を収めている。次の16年7月選挙でも連続当選を果たした。
ちなみにマレー選挙区は、面積が7万4,000平方キロメートルと、合計で37存在するVIC州の連邦下院選挙区の中では最大の選挙区である。同選挙区だけでVIC州の面積の実に34.5%を占めている。
政界入りしてからのブロードは、陣笠(じんがさ)議員として議会委員会活動で活躍したが、つい最近までは比較的地味な存在であった。ところが昨年の初めに、ブロードの発言がメディアで報道され、注目されることとなった。
当時、不倫スキャンダルでジョイス国民党党首兼副首相が苦境に陥っていたのだが、ブロードは倫理面から公然とジョイスを批判し、党首からの辞任を進言したのである。実際にジョイスは、その直後に党首からの辞任を余儀なくされ、代わりにマコーマックが就任している。
一方、昨年の8月には、モリソン保守連合政権が誕生したが、第1次組閣でブロードは、マコーマックの指名を受けて、国民党党首兼副首相担当補佐大臣(注:かつての政務次官)としてフロントベンチャー入りを果たした。
ところが、まさに政治家としてこれからという時に、ブロード自身が女性スキャンダルに見舞われている。それは、ブロードが香港を訪れた際に、当地で若い女性と「援助交際」を行ったのだが(注:ただし肉体関係はなし)、その前にブロードが女性に送った卑猥(ひわい)なテキストの内容、女性と食事を共にした際の野卑(やひ)な行動などが、昨年の12月に豪州の雑誌で暴露されたことであった。これを受けてブロードは、同日補佐大臣からの辞任を表明している。しかもこの事件を契機にして、複数の女性から、ブロードのこれまでのセクハラ的素行に批判の声が上がったことから、結局、ブロードは今期限りで政界から引退するとの決定を余儀なくされている。