政界こぼれ話人物編 その224
ジム・チャーマーズ影の財務大臣
Jim Chalmers
連邦野党労働党の影の財務大臣であるジム・チャーマーズは、1978年3月2日にQLD州の州都ブリスベンの南部郊外で誕生している(41歳)。父親はブルー・カラー層であったが、幼少時より学業に秀でたチャーマーズはQLD州のグリフィン大学に進学し、ここでも優秀な成績を収めている。また後年、首都キャンベラの豪州国立大学(ANU)より、政治学・国際関係論で博士号も取得している。
大学卒業後は、労働党政治家の典型的なキャリア・パスを邁進。同キャリア・パスとは、①労組専従員・幹部、②労働党政治家の顧問、あるいは③両者を指すが、チャーマーズの場合は①の経験は全くなく、②のキャリア・パスを経て政治家となっている。主要なものとしては、ビーズリー野党労働党党首の顧問や、スワン財務相兼副首相のチーフ・オブ・スタッフ等である。
ちなみに、チャーマーズが財務相オフィスのトップとなったのは、弱冠32歳の時である。この事実からも、チャーマーズが政界入りする以前から、高い知的能力ばかりか、政治能力も具(そな)えていたことがうかがえよう。ただ附言すれば、仕えたスワンは、財務相としての評価が相当に低かった政治家である。そのため、チャーマーズのこの経歴は必ずしも誇らしいものではない。
政界入りは、アボット保守連合政権が誕生した2013年9月の選挙である。労働党の大物のエマーソン(注:一時期ギラード元労働党首相と恋仲であった)の政界引退に伴い、チャーマーズはブリスベン郊外のランキン選挙区から出馬し、初当選を果たしている。そして16年選挙、19年選挙でも連続当選を果たした。初当選直後に、閣僚/影の閣僚への登竜門とされる政務/影の政務次官に抜擢され、15年10月の影の改造で影の閣外相に、16年7月選挙後の影の組閣では、影の予算相として影の内閣入りを果たした。そして、まさかの敗北を喫した19年5月選挙後のアルバニーゼ第1次影の組閣では、重要な影の財務相に就任し、現在に至っている。
思想、信条だが、労働党の右派、しかも強力なQLD右派に所属する。同じく右派のショーテンは、党内左派に阿(おもね)るためもあって、政策路線を「左旋回」させ、当時影の予算相であったチャーマーズも、「大きな政府」路線を売り込んでいたが、実はチャーマーズは相当な経済合理主義者と言える。
人柄だが、19年選挙直後には、チャーマーズに党首選挙への出馬を勧める向きもあった。その理由の1つは、チャーマーズが都会の有権者にも、地方の有権者にも受けが良いと見られているからだ。実際に人当たりの良いチャーマーズは、高いコミュニケーション能力を具えている。現時点では、おそらく次期労働党党首の最右翼と言えよう。