保険
Q
昨今、内部告発者法(Whistleblower Laws)の違反に対する罰金が非常に厳しくなったと聞きましたが、それに対してStatutory Liabilityという保険があると聞きました。詳細を教えて下さい。(50代人事担当=男性)
A
お問い合わせについては言わずもがなですが、保険手配を検討する前にしっかりと社内のリスク・マネージメント・プランを確立させることがまず重要です。
例えば、自社事業に適用される関連法をきちんと把握し、社内コンプライアンスを確保するための適切な制度や規制を定めておくことができると思います。それを踏まえた上で、保険手配を検討するのであればStatutory Liability保険は非常に有効だと言えます。
一般的なStatutory Liability保険は、下記のような法令に対する意図せぬ違反に際し、民事訴訟、刑事訴訟、紛争調停手段(Alternative Dispute Resolution=ADR)、もしくは当局による法定の罰金(Fines and Penalties)への補償を提供する保険です。
- Workplace Health and SafetyActs(労働安全衛生法)
- Employment Practices Laws(雇用慣行法)
- Environmental Protection Authority (EPA) Legislation(環境保全法)
- Spam and Privacy Laws(迷惑メール及びプライバシー法)
- Whistleblower Laws(内部密告者法)
また、同時に個人を補償対象とすることも可能で、個人がオーストラリア証券投資委員会(ASIC)やオーストラリア健全性規制庁(APRA)などの規制当局から名指しで訴えを受けた場合にも、上記同様に調査費用、抗弁費用などを保険対応することができます。
注目すべきは、一般的なStatutory Liability保険においては、Advancement of Defence Costsと称して、違反が確定しておらずまだ疑いの状態にある時点での調査費用なども保険対象になり、結果的に違反にならないとなった場合でも、それを証明するために発生した費用として保険対象にできることです。これにより、キャッシュフローの健全化などの観点からも、本保険手配の検討が有効と言えます。
なお、保険補償には限度額や免責事項などの条件が付きますので、そういった内容を踏まえて、自身のニーズに即した保険かどうかを判断する必要があります。また意図して行った違反行為は、保険対象とはなりませんので、その点にもご注意ください。
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斉藤 大(さいとう だい)
エーオン・リスク・サービス・オーストラリア
ジャパン保険サービス部
世界最大手のリスク・コンサルタント会社豪州法人の日系専門部署で日々日系企業顧客の法人・個人保険アレンジ、事故処理などを担当