汚職調査独立委員会が表明
オーストラリア東部ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州のグラディス・ベレジクリアン前州首相(自由党)が、元交際相手のダリル・マグアイア元州議(同党)の地元選挙区への補助金提供をめぐり、不正な便宜を図った疑いが持たれている問題で、同州の汚職調査独立委員会(ICAC)は11日、最終報告書を今年第2四半期以降に公表すると明らかにした。3月25日投票のNSW州議会選挙後に事実上、先延ばしした格好だ。公共放送ABC(電子版)が報じている。
ICACは声明で「報告書の原案の大半は完成しているものの、30日以上に及ぶ2つの調査委員会の2,800ページ以上の議事録、516個の証拠、957ページのパブリック・コメントを精査し、法律と事実が関わる複雑な問題を考慮しなければならない」と弁明した。
ABCによると、報告書はこれまで3月の州選挙までに発表されると見られていた。ICACは報告書の発表日時を現時点で決めることは不可能だとしつつ、「第2四半期」までは完成しない見通しであることを明らかにした。
前州首相の補助金支出は不正行為だったのか?
最終報告書では、前州首相の補助金支出が、市民の信頼を損ねる不正行為だったと言えるのかどうかが焦点となる。
ベレジクリアン前州首相とマグアイア元州議をめぐる疑惑が最初に浮上したのは2020年。ABCの時事番組「セブン・サーティー」の当時の報道によると、ベレジクリアン氏が州財務相を務めていた17年、マグアイア氏の地元選挙区である州西部ワガ・ワガのクレー射撃協会に5億5,000万豪ドルの補助金が州政府のファンドから支出された。この際、マグアイア氏がベレジクリアン氏に補助金の認可を請願した手紙が明るみに出た。
また、ベレジクリアン氏が州首相だった18年には、同じくワガ・ワガにあるリベリナ音楽院の再開発費として、既に決まっていた1,000万豪ドルに加えて2,000万豪ドルを追加支出することを発表していた。
ベレジクリアン氏とマグアイア氏は当時、公表していなかったものの交際関係にあった。このため、ベレジクリアン氏が州財務相や州首相の権限を利用し、マグアイア氏に不正な便宜を図ったのではないかとの疑いが浮上。「市民の信頼を損ねた」可能性があるとしてICACが調査に乗り出した。このため、ベレジクリアン氏は21年10月1日に州首相を辞任し、州下院議員も辞職すると表明した。
ベレジクリアン氏の疑惑は現時点で解明されておらず、本人も不正を否定している。
一方、マグアイア氏は昨年11月、別の移民法違反容疑で起訴されている。同氏は13〜15年、外国人女性の滞在ビザをめぐり虚偽の申請を行った疑いが持たれている。保釈が認められたもののパスポートの返上が命じられた。2月7日に行われる公判に出廷する予定だ。
■ソース
Release of ICAC report on Daryl Maguire, Gladys Berejiklian delayed(ABC News)