農業輸出大国に恩恵 来年以降は干ばつ再来の可能性
3シーズン目に入ったラニーニャ現象が、農業輸出大国オーストラリアに恵みの雨を降らせている。政府系シンクタンクのオーストラリア農業資源経済局(ABARES)が7日発表した2023年3月四半期版の作柄報告書によると、22/23年度(22年7月1日〜23年6月30日)の同国産農産品の生産額(作物と畜産物の合計)は899億8,800万豪ドル(約8兆1,400億円)と前年度比で2.6%増え、過去最高を更新する見通しだ。
前回22年12月四半期版の見通し(852億7,000万豪ドル)と比較して、47億1,800万豪ドル上方修正した。輸出額も12月時点で過去最高としていた723億2,100万豪ドルからさらに25億1,700万豪ドル引き上げ、748億3,800万豪ドルと予測した。
ラニーニャの影響で引き続き多雨に恵まれたため、主力の小麦や菜種などの作柄が絶好調となっている。加えて、国際商品価格が高い水準で推移していることも、金額ベースで生産の約8割を輸出するオーストラリア農業に強い追い風を吹かせた。
報告書は「商品価格は21/22年度に記録した過去30年間の最高値から下落に転じた」ものの、依然として高値を維持していると指摘。22年後半に東海岸を襲った洪水は部分的に打撃を与えたが、「全国的には穀倉地帯の大半で素晴らしい生育条件に恵まれ、冬作物の生産は過去最高を更新しそうだ。小麦や菜種の収穫率は過去最高となり、大麦の生産も過去最高に近い水準に達するだろう」としている。
23/24年度は生産額10%減、輸出額15%減へ
ただ、異例の3年連続のラニーニャは近シーズンで終息する見通しで、乾燥した気候が再来する可能性が高いと見られている。オーストラリアでは、ラニーニャは多雨と低温をもたらし豊作となるケースが多い。一方、エルニーニョのシーズンはしばしば干ばつと高温に見舞われ、穀物生産は数年おきに大打撃を受けてきた。
ABARESの予測によると、23/24年度産の生産額は814億3,200万豪ドルと前年度比9.5%減、輸出額は638億7,000万豪ドルと14.7%減となる見通しだ。
ABARESのジャレッド・グリーンビル代表はこう述べている。
「今年を最後に、しばらくラニーニャに喝采することはないでしょう。来年以降はより乾燥した気候に変わる可能性が高まっています。しかし、(ラニーニャの大雨で)地中に蓄えられた水分は、作物の生育に良い影響を与えます。23/24年度の生産額は約810億豪ドルまで落ち込むと予測していますが、それでも史上3番目の豊作なのです」