米FOMCは政策金利を0.25ポイント引き上げ
インフレがピークアウトする中で2日、昨年5月以降11回目となる政策金利引き上げに踏み切ったオーストラリアの中央銀行・豪準備銀(RBA)に対し、世間の風当たりが強まっている。追加利上げは依然として高水準にある物価上昇を抑え込むのが目的だが、世帯のおよそ3分の1を占める住宅ローン債務者は、毎月の支払い負担が拡大して生活が苦しくなる。折から激しいインフレに加え、行き過ぎた利上げは消費意欲を冷え込ませかねない。(解説:ジャーナリスト・守屋太郎)
利上げをめぐるジム・チャーマーズ連邦財務相のコメントは「とても厳しく残酷なものだ」と辛辣だった。経済情報会社デロイト・アクセス・エコノミクスのプラディープ・フィリップ氏も「RBAはリセッション・ルーレットをプレーしている」と批判した。
リセッション・ルーレットとは、ロシアン・ルーレットをもじった言葉で、「景気後退の賭け」を意味する。中銀の急激な利上げを揶揄する新語として最近、オーストラリアのメディアに頻出している。
利上げを受けて、オーストラリアの4大銀行のうち3行が金利変動型住宅ローンの利率を引き上げることが、4日までに明らかになった。ナショナル・オーストラリア銀(NAB)とオーストラリア・ニュージーランド銀(ANZ)は12日、ウェストパック銀は16日にそれぞれ0.25ポイント上げる。
公共放送ABC(電子版)によると、標準的な借入額50万豪ドルの金利変動型住宅ローンの場合、0.25ポイントの利上げによって支払い額は1カ月当たり78豪ドル増える。利上げが始まった昨年5月以前と比較すると、支払い額の増加額は1カ月当たり1,058豪ドルに達する。物価水準が異なるとはいえ、月々の家計の出費が住宅ローンだけで1年も経たないうちに約9万5,000円増えることなど、長年インフレと無縁だった日本では考えられないことだろう。
もっとも、国際的に見ればオーストラリアの利上げペースはむしろ緩やかなものと言える(グラフ参照)。米連邦公開市場委員会(FOMC)は3日(現地時間)、政策金利の指標であるフェデラル・ファンド金利を0.25%引き上げて5.0〜5.25%とした。同金利はリーマンショック前からの約16年間で最も高い水準まで引き上げられ、利上げはこれが打ち止めとの観測が広がっている。
高いインフレに悩まされている主な先進国は、米国に追従してオーストラリア以上のスピードで利上げを実施してきた。カナダ(4.5%)や英国(4.25%)などと比べ、オーストラリアの利上げが特に突出して激しいわけではない。
通貨の安定を図る各国の中銀としては、国内のインフレ抑制のためだけではなく、利上げに突っ走る米国を追いかけざるを得ない側面もある。マネーは金利の高いところへ流れるため、米国とオーストラリアの金利差が広がれば、国際的な基軸通貨である米ドルに対して豪ドルが毀損する。豪ドルの下落は、資源などの輸出に追い風となる反面、輸入物価の上昇に直結し、インフレをさらに加速させかねない。
一方、主要な先進国の中では唯一、米国の利上げに追従していない国がある。日本では、エネルギーや食糧価格の上昇など供給インフレが顕在化しているものの、上昇ペースは欧米諸国と比べると緩やかな水準にとどまる。日銀は当面、現在のマイナス金利(-1.0%)を維持する方針だ。
■ソース
Federal Reserve issues FOMC statement(Board of Governors of the Federal Reserve System)
Statement by Philip Lowe, Governor: Monetary Policy Decision(Reserve Bank of Australia)
RBA interest rate rise catches markets, banks and borrowers by surprise(ABC News)