即時関税ゼロまたは関税割当枠拡大で恩恵
豪英自由貿易協定(FTA)が5月31日に発効することで、オーストラリアの農業生産者の間では輸出拡大に期待感が高まっている。8日付の公共放送ABC(電子版)が報じている。
オーストラリアと旧宗主国である英国の結びづきは強いが、貿易面では近年、アジア諸国との関係が相対的に深まっている。2022年の2国間の輸出入額は約100億豪ドル。オーストラリアにとって英国は15番目の貿易相手国にとどまっている。
FTA発効後は、英国に輸出されるオーストラリア産品の99%の関税が撤廃され、関税割当(一定数量に限って無税または低税率で輸入できる仕組み)の枠が拡大される。オーストラリア産の主な農水産物のうち、ワイン、コメ、ハチミツ、水産物の大半、加工食品、ナッツ類、果実、野菜の関税がゼロになるとともに、牛肉、羊肉、砂糖、小麦、乳製品の関税割当が増える。
特に期待が大きいのが、中国の輸入規制で打撃を受けているワイン産業だ。生産者団体「オーストラリア・ブドウ・ワイン協会」のリー・マクリーン代表はABCに「私たちは、南米の多くの(競合)国より優位に立つことができるようになります」と述べた。マクリーン代表によると、オーストラリア産ワインの英国向け輸出額は最大5,000万豪ドル増加する可能性があるという。
オーストラリア農業の主力輸出商品である牛肉もFTAの恩恵を受ける。英国向けのオーストラリア産牛肉の無税枠は今後、3万5,000トンから段階的に11万トンまで引き上げられる。10年後には関税が撤廃される。羊肉の無税枠も同じく段階的に引き上げられ、10年後に関税はゼロとなる。
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)のアンドリュー・マクドナルド氏は「英国の消費者が、どのオーストラリア産品が嗜好に合うかを理解するまでには、時間がかかる」とした上で、オーストラリア産の畜肉が小売店や飲食店に出回り始めれば「ラムチョップやオージービーフのステーキ、ゴート肉のカレーなどを味わってほしい」と呼びかけている。
オーストラリア産のイセエビやサケ、バラマンディー、コーラルトラウトなどの魚類の関税も5月31日から撤廃される。オーストラリア水産業協会のベロニカ・パパコスタ氏によると、現状では英国はオーストラリア産水産物にとって大きな輸出市場ではないが、FTA発効を機に伸びそうだという。
「英国ではオーストラリア産の魚介類への評価が高く、需要はあります。ただ、(距離が長いため)コロナ禍後に高騰した貨物運賃が下落するのを待つ必要があります」(パパコスタ氏)
一方、豪英FTAでは、英国からオーストラリアを訪れるワーキングホリデー渡航者(ワーホリ)の年齢制限も現行の30歳から35歳に引き上げられ、滞在可能期間も延長される。このため、農業生産者にとっては、作物を収穫するワーホリの季節労働者を確保しやすくなるというメリットもある。
■ソース
UK free trade agreement good news for Australian winemakers, farmers and fishers(ABC News)