過去の干ばつでは食糧生産に大打撃、森林火災も
オーストラリアでは南半球の夏(12月〜2月)に向けて、高温と干ばつをもたらすエルニーニョ現象が再来する可能性が高まっている。給水や農業、電力需給など社会の幅広い範囲に影響を与える恐れがある。
これまで3シーズン連続で、オーストラリアに低温と大雨を誘発するラニーニャが発生していた。記録的な大雨による洪水被害に見舞われる一方で、穀物の作柄が過去最高の豊作となるなど主に農業や輸出に好影響を与えていた。ところが、この夏は一転して水不足に悩まされそうだ。
オーストラリア気象局(BOM)は6日、「今年エルニーニョが発生する確率は約70%」と発表した。エルニーニョ警戒レベルを「監視」(ウォッチ)から「厳戒」(アラート)に引き上げ、オーストラリア大陸の東部・南部で干ばつと高温に注意するよう国民に呼びかけた。
エルニーニョは南米赤道付近の太平洋上の界面水温が平年より高くなる現象で、地球規模の天候に影響を及ぼすことが知られている。BOMによると、オーストラリアでは◇東部の降水量減少、◇大陸の南側約3分の2での昼間の気温上昇、◇異常な高温のリスク上昇、◇南東部での森林火災の増加、などの影響が心配される。
エルニーニョはおおむね3年から5年に一度の頻度で繰り返す。オーストラリアでは過去にエルニーニョ発生と時を同じくして、降水量の激減による干ばつや水不足、高温と乾燥による森林火災が起きている。2000年代後半には2シーズン連続で過去最大規模の干ばつが発生し、オーストラリア産小麦の生産量が平年の半分以下に、コメが約100分の1にそれぞれ激減。オーストラリア産穀物の凶作が世界的な食糧高騰の引き金となり、その影響が国内だけではなく地球を駆け巡ったケースもある。
オーストラリアの大都市でも、庭の水やりや車の洗車が禁止されるなど上水道の使用が制限されたり、森林火災の煙が健康被害をもたらしたりと影響は小さくなく、注意が必要だ。
■ソース
The Bureau of Meteorology issues an El Nino ALERT, Media Release(Bureau of Meteorology)