他国と比べて海外出身者が多く、学歴や技能が高い
オーストラリアの人口増加を支えてきた移民受け入れは、経済にどのような具体的影響を与えているのか−−。国際通貨基金(IMF)が様々なデータを定量的に調査した結果、学歴や技能の高い移民(注)がオーストラリアの労働市場に好影響を与えていることが分かった。一方、住宅価格上昇の要因とはなっているものの、インフレを全体的に押し上げていていないことなども確かめた。
注:永住目的の移住者だけではなく、駐在員や留学生などの長期滞在者も含む広義の移民
IMFが18日に発表した報告書「移民がマクロ経済に与える影響」によると、オーストラリアの総人口に占める海外生まれの人の割合は30%と経済協力開発機構(OECD)加盟国で最も高い。これは、OECDの平均14%の2倍以上で、他の代表的な移民受け入れ国であるカナダ(21%)や米国(14%)などと比べても突出している。
また、海外生まれの人口に占める高等教育(大学・専門学校以上)終了者の割合は約60%とOECDの平均(約40%)を大幅に上回っている。近年オーストラリアに移住した人のうち69%が高等教育以上の学位を入国前に保持していて、このうち、79%が学士号以上の学位、13%がディプロマ(専門学校・短大相当の修了資格)を取得していた。このため、25〜64歳の移民に占める高等教育終了者の割合はカナダに次いで2番目に高く、最も学歴の高い移民を受け入れている国の1つとなっている。加えて、移民の多くは高技能の専門職または留学生で、人道目的の移民や難民の割合が比較的少ない。
報告書は「オーストラリアの移民受け入れ政策は、歴史的に人口増加を支えてきた。また、近年は少子高齢化を背景に自然増(出生者数から死者数を引いた数)が落ち込む中で、移民は人口拡大を持続させる手段として重要性を増していると指摘。その上で「オーストラリアはOECD諸国で指折りの高学歴の移民を受け入れ、その多くは高技能労働者または留学生であり、労働市場参加率が高く、失業率が低い」としている。
オーストラリアに高学歴・高技能の移民が多い背景には、国内で足りていない高技能のスキルを持つ労働者を呼び込む選択的な移民政策がある。学歴や技能、職歴などのポイントが多いほど、就労したり永住権を取得したりしやすくなるビザ制度が奏功している形だ。欧州などでは、移民が主に低賃金の単純労働者を担い、失業率の上昇や社会の分断、治安の悪化を招いたとして、移民排斥を掲げる極端なナショナリズムの台頭を招くケースがある。一方、オーストラリアは高学歴・高技能の人を選択する移民政策が、経済や社会の持続的な発展に寄与してきたと評価されている。
こうした移民をめぐる好環境を踏まえ、IMFはオーストラリアの移民受け入れ数の増加と、実質国内総生産(GDP)成長率や失業率、インフレなどの主な経済指標の相関性について、定量的に調査した。
「私たち移民はオーストラリア経済にいかに貢献しているのか②」に続く。
■ソース
Australia Selected Issues, MACROECONOMIC IMPACT OF MIGRATION(International Monetary Fund)