「容量20ギガワット」とエネルギー相 インド洋上7,700平方キロで
西オーストラリア州南西部沖に超巨大な洋上風力発電所を建設するプロジェクトをめぐり、連邦政府は20日、パブリックコメントの募集を開始した。5月3日に応募を締め切る。3月19日〜21日には4カ所で説明会も開き、地域住民の意見も聞く。
オーストラリアの現政権は、2050年の温室効果ガス排出実質ゼロを実現するため、30年までに同排出量を05年比で43%削減しする目標を掲げる。このため、発電量に占める再生可能エネルギーの割合を82%と飛躍的に引き上げることを目指し、太陽光発電や風力発電の導入を積極的に増やしている。洋上風力発電については国内6地域で構想を発表しているものの、まだ事業化していない。
西オーストラリア州南西部沖のプロジェクトはこれらの1つ。連邦気候変動・エネルギー省によると、バンバリー(パースから南へ直線距離で150キロ)の沖約20キロ、バサルトン(同200キロ)の沖約36キロ付近のインド洋上に広がる7,674平方キロの海域に建設するとしている。
設備容量(発電能力)については、クリス・ボウエン連邦気候変動・エネルギー相が「最大20ギガワット(GW=1GWは100万キロワット=kW)」と明言している。もしこの数字にミスがなければ、世界に類を見ない大規模な洋上風力発電所となる。
平均的な原発1基の容量が100万kW(1GW)とすれば、同プロジェクトが実現した場合、最大で原発20基分の容量を持つことになる。22年末の全世界の洋上風力発電の容量64.3GW(世界風力エネルギー協議会=GWEC発表)の約3割、世界最大級の英ドッガー・バンク洋上風力発電の容量3.6GW(完成時=同風力発電所発表)の10倍以上ととてつもなく巨大だ。
同省は声明で「世界が炭素ゼロ社会に移行していく中で、オーストラリア西部の資源産業と重工業が競争力を維持して生き残るには、再生可能エネルギーの利用を加速させる必要がある」と大規模な洋上風力発電導入の必要性を訴えている。
洋上風力発電は、陸上と比べて風力が強く安定していて、景観や騒音の影響が小さいなどのメリットがあり、主に欧州で普及が進んでいる。一方、海上での建設工事や維持・管理、送電用の海底ケーブルなどのコストは高くなる。人口が希薄な遠隔地が多い西オーストラリア州では、陸上に建設する場合と比較した費用対効果が課題となる。周辺海域はインド洋のうねりが高いため、厳しい風波に耐える設計も求められそうだ。