「幽霊フライト」などで失墜した信頼の回復支える
オーストラリアの航空最大手カンタス航空や格安航空会社ジェットスターなどを運営するカンタス・グループは21日、通信最大手テルストラの会長などを歴任したジョン・マラン氏を新しい会長に迎え入れると発表した。まず今年7月1日に社外取締役に就き、10月に開かれる年次株式総会での承認を受けて次期会長に正式に就任する。
カンタスは2020年以降、ロックダウン(都市封鎖)でほぼ全便欠航となり窮地に陥ったが、アラン・ジョイス前最高経営責任者(CEO)の下で、23年までに業績はV字回復を果たした。ところが、利益の水増しとも取られかねない「幽霊フライト」問題が発覚。コロナ禍からの回復局面で、キャンセルした便の航空券を不正に販売していたとして、オーストラリア競争消費者委員会(ACCC=日本の公正取引委員会に相当する規制当局)が23年8月に告訴した。
これを受けて、ジョイス氏は退任を2カ月前倒しして同年9月にCEOを辞任。生え抜きのバネッサ・ハドソン氏が同社初の女性トップに昇格していた。
その直後には、カンタスがコロナ禍の真っ只中の20年に空港地上職員1,700人を解雇した問題をめぐっても、連邦最高裁が違法との判決を下している。
相次ぐ不祥事で世間や議会から批判の矢面に立たされたカンタスは、ゴイダー会長も23年11月、24年の年次総会で退任すると発表。信頼を取り戻すため、会長を含む取締役人事の刷新を進めていた。
マラン氏はオランダ拠点の物流大手TNTエクスプレスやドイツの同業DHLの経営トップを経て、テルストラ(18年〜23年)、オーストラリアの物流資材大手ブランブルズ(20年〜)、オーストラリアの物流大手トール(17年〜)、ワイン大手トレジャリー・ワイン・エステーツ(23年〜)などで会長職を務めている。オーストラリアを代表する大企業で会長職を歴任してきたプロ経営者が、信頼回復を図るハドソン氏ら経営陣を支える。