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「ユート税」批判浴び、小型商用車への規制ゆるく オーストラリア政府の新車燃費基準

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温室効果ガス削減 議会に法案上程

 オーストラリア連邦政府は27日、国内で販売される新車に対する燃料消費基準を定めた法案を議会に上程した。法案では、一定の走行距離当たりの二酸化炭素排出量(CO2)の上限を段階的に厳格化する。排出総量が年間で上限を上回ったメーカーは、排出権の「クレジット」を購入して帳尻を合わせるか、高い罰金を支払う必要がある。

 よりクリーンな車の輸入をメーカーに促し、運輸部門の温室効果ガス削減につなげる狙いがある。政府によると、新車のCO2排出量を2030年までに乗用車で6割以上、小型商用車でおおむね5割、それぞれ削減できるという。燃料消費が減ることで、財布にも優しい政策だとしている。

 ただ、オーストラリアの新車市場は、「ユート」と呼ばれる小型のピックアップ・トラックや、スポーツ多目的車(SUV)の人気が高いという特徴がある。いずれも大型で重く、排気量も多いため、小型乗用車と比べて環境負荷は大きい。与党の原案は、販売台数の上位を占めるこれらの車種への規制が厳しいとして、自動車業界や野党から「ユート税」と批判されていた。

人気高い小型トラックやSUVは優遇

 反発を和らげるため、政府はこれらの小型商用車への規制を当初の計画と比べてゆるやかなものとした。

 英紙「ガーディアン」のオーストラリア版(電子版)によると、原案では、新車1台当たりの走行距離1キロ当たりのCO2排出量の上限を25年に乗用車141グラム、小型商用車199グラムとし、29年までに乗用車58グラム、小型商用車81グラムまで引き下げる計画だった。

 しかし、政府が26日に公表した法案では、小型乗用車の排出量上限は25年に210グラム、29年までに110グラムと引き上げた。25年の導入時期も半年遅らせた。規制をゆるやかにすることで、同法案による50年までのCO2削減効果は当初の3億6,900万トンから3億2,100万トンに縮小するという。

 また、SUVのうち小型トラックと同様の頑丈なラダーフレーム(はしご型フレーム)を持つ車種については、カテゴリーを従来の乗用車から小型商用車に変更する。トヨタ・ランドクルーザー、フォード・エベレスト、いすゞMUX、日産パトロール、三菱パジェロ・スポーツなどが対象となる。カテゴリー変更により、人気の高いこれらの車種は小型トラックと同様、排出規制が乗用車より優遇される形となる。

 政府は今議会で成立を目指す。しかし、与党勢力が過半数に満たない上院では、可決の見通しが立っていない。上院でキャスティングボートを握る野党第3勢力の左派「グリーンズ」(緑の党)が、別の天然ガス開発プロジェクト認可に絡む法案の修正に応じない限り、新車燃費基準法案に賛成しない方針だからだ。議会審議では紆余曲折も予想される。

■ソース

Joint media release: A New Vehicle Efficiency Standard tailored for Australia(The Hon Chris Bowen MP, Minister for Climate Change and Energy)

Labor unveils watered-down fuel efficiency standard that eases emission rules for large SUVs(The Guardian, Australia edition)

New Vehicle Efficiency Standard weakened, with rules softened for utes and vans(ABC News)





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