次期連邦選挙に向けた実質的な公約か
オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は11日、東部ブリスベンで演説し、経済安全保障や再生可能エネルギー開発、製造業の国内回帰などを一体化して進める「フューチャー・メイド・イン・オーストラリア」(オーストラリアで作られる未来)法案を策定すると発表した。経済安保をめぐる国際競争が加速する中で、自由競争に任せるのではなく国家主導で経済改革を行う。
アルバニージー首相は「各国は経済と安保を密接に結び付けている」との認識を示した。米国の「インフレ削減法」や欧州連合(EU)の「欧州経済安全保障戦略」、日本の「経済安全保障推進法」といった実例に挙げ、「これらの国は、産業基盤と製造業の強化、経済的主権に投資している。これは古典的な保護主義や孤立主義ではなく、新たな競争だ」と述べた。オーストラリアは国際競争に取り残されず、勝ち抜くべきだとの考えだ。
また、首相はオーストラリアの強みとして、◇豊富な資源、◇成長が著しいアジアに近いロケーション、◇恵まれた自然環境、◇知性と技能に富んだ人的資源を挙げ、「これらの既存の強さだけでは十分ではない」と指摘。「次世代のために繁栄と機会を創造するために、生産性と競争力を強化するには経済改革の新しい波が必要だ」と強調した。
その上で首相は、◇製造業の国内生産を拡大するための投資、◇新しいテクノロジーに関する職業訓練、◇民間のイノベーションを利用して新しい投資を刺激すること、◇雇用の安定確保と公平な賃金、を同法案で実現したいとの考えを示した。
ただ、現時点で具体策は不透明で、総予算や財源も明らかではない。既存の水素開発推進プログラム「ハンドロジェン・ヘッドスタート」、ソーラーパネル国産化計画「ソーラー・サンショット」、産業構造の転換を図る「全国再生基金」を一体化して運用することなどを検討しているが、全体的な規模感は5月14日に発表する2024-25年度連邦予算案である程度明らかになりそうだ。法案は今年中に公表する。
オーストラリアでは、次期連邦選挙(下院の全議席の上院の約半数を改選)が2025年5月までに実施される予定。同法案は「連邦選挙に向け政策の指針を示すものだ」(公共放送ABC=電子版)との見方も出ており、2期目の再選を目指すアルバニージー労働党政権の公約の柱となる可能性がある。
■ソース
A future made in Australia(Prime Minister of Australia)
Television interview – Sunrise(Prime Minister of Australia)