まだ子ども 2年後は体長5メートル、体重3.5トンの成獣に
アザラシの仲間で世界最大の「ミナミゾウアザラシ」(英名:サザン・エレファント・シール、学名:Mirounga leonine)の通称「ニール」がこのほど、オーストラリア南部タスマニア島の海岸に再び上陸した。住宅地を徘徊する愛らしいしぐさがソーシャル・メディアを賑わせている人気者だが、専門家は静観を呼びかけている。公共放送ABC(電子版)が伝えている。
オーストラリアに生息するミナミゾウアザラシは、南極に近い孤島のマッコーリー島やハード島に多いが、ニールは2020年の後半に州都ホバート東方のセーラム湾で生まれた。生まれ故郷に戻る習性があるため、タスマニア島では比較的人口が多い南東部にたびたび上陸し、話題を集めてきた。
今回の上陸は既に6回目。昨年も、住宅の庭に侵入したり、車の前に寝そべって住民が仕事に行けなくなったりといった「珍事」がニュースで報じられ、ソーシャル・メディアでも注目を集めた。
州環境省によると、ミナミゾウアザラシはイカを主食としていて、外洋へ食糧探しの旅に出る合間に4〜5週間、陸地で過ごす習性がある。ニールも昨年末、南極海に出て行ったが、また一段と大きくなって帰ってきた。
ニールはまだ2歳だが、既に体重は600〜700キロとお相撲さん5人分くらいある。あと2年も経てば、体長5メートル、体重3.5トンとトラック大のおとなに成長する。
「近づかないで!」と専門家
当局はニールを保護するため、ニールが現在どこにいるかを明らかにしていない。タスマニア州環境省の生物学者、クリス・カーリヨン博士はABCに対し、ニールに遭遇したとしても、居場所をソーシャル・メディアで決して公表しないよう呼びかけている。
「(ミナミゾウアザラシは)生まれたところに戻る傾向があります。ニールはタスマニア島南東部に戻ることが遺伝的に組み込まれていて、何度も戻ってきています」(カーリヨン博士)
ただ、1985年から2022年までの間、タスマニア州でミナミゾウアザラシの幼獣が生まれた例は9件しか報告されていない。いっしょに遊ぶほかのアザラシがいないため、同博士は「退屈なので、動くものと触れ合おうとするのです。それは人や子ども、犬、クルマかもしれません。非常に危険です」と警鐘を鳴らしている。
「人々が(ニールに)魅了され、会いに行こうと考えるのは理解できます。しかし、ニールのためにも、人のためにも注意が必要です。野生動物の行動は予測不可能です。人が近づくことは危険です」(同博士)
州環境省は、休んでいるミナミゾウアザラシの邪魔をしないこと、20メートル以内に近づかないこと、犬はリーシュにつなぎ50メートル以内に入らせないこと、を呼びかけている。
■ソース
Southern Elephant Seal(Department of Natural Resources and Environment Tasmania)