次期選挙視野に生活コスト支援手厚く
オーストラリア連邦政府は14日、2024-25年度(24年7月1日〜25年6月30日)の国家予算案を発表した。予算案発表は、アンソニー・アルバニージー首相率いる現労働党政権下で3度目。今年度(23-24年度)の単年度の基礎的財政収支は前年度から2年連続で黒字を見込むが、24-25年度は3年度ぶりに赤字に転落する見通しだ。歳出面では、所得制限のないエネルギー料金の一律支援や低所得者層への家賃補助の増額など、生活費高騰を和らげる施策を打ち出した。労働党政権の下で中間層により優しい形で修正した所得税減税の第3弾も、7月1日から実施する。再生可能エネルギー振興や製造業の国内回帰などを図る新産業政策「フューチャー・メイド・イン・オーストラリア」(オーストラリアで作られる未来)も推進する。
6月いっぱいで終了する23-24年度の歳入は6,923億豪ドル、歳出は6,830億豪ドルを見込む。歳入から歳出を引いた基礎的財政収支は93億豪ドルの黒字(国内総生産=GDPの0.3%)となる。黒字幅は前年度の221億豪ドル(同0.9%)から減るものの、2年連続で単年度黒字を達成する見通しだ。
一方、24-25年度の歳入は6,884豪ドル、歳出は7,267豪ドルを見込み、基礎的財政収支は283億豪ドルの赤字(同1.0%)と3年ぶりに赤字に転落すると見られている。
基礎的財政収支の赤字幅はその後、25-26年度428億豪ドル(同1.5%)、26-27年度267豪ドル(同0.9%)、27-28年度243億豪ドル(同0.8%)と推移していくと予測されている。
「新世代の経済的繁栄を築く」と財務相
ジム・チャーマーズ連邦財務相は議会で14日夜、「生活コスト支援とオーストラリアで作られる未来」と題した予算演説を行い、「今日(生活コスト高騰に)疲弊している国民を支援するとともに、私たちがともに創るより繁栄した未来に投資する、信頼できる予算案だ」と述べ、次の5つの優先事項を列挙した。
◇生活コスト高騰で困っている人を支える
◇オーストラリア国民のためにより多くの住宅を建設する
◇「オーストラリアで作られる未来」と、技能の向上、大学教育のために投資する
◇メディケア(国民健康保険)制度と、ケア(介護、看護)の経済圏を強化する
◇責任のある経済運営により、財政健全化とインフレ抑制を図る
その上で財務相は「激動と変革の世界でオーストラリア国民が最大の受益者となるために、高い目標を掲げる。現在の(生活コスト高騰の)圧力を乗り越え、(経済的な)強みを最大限に生かして、新たな世代の経済的繁栄を築いていく」と語り、スピーチを締めくくった。
2年連続の黒字という財政運営の成果を強調しつつ、インフレや利上げで苦しむ国民を手厚く支援する姿勢を打ち出したアルバニージー政権。25年5月*までに実施される見通しの次期連邦選挙で2期目の再選を狙う。
*下院の全議席および上院の約半数を改選する場合、最も遅い投票日は25年5月24日(土)と規定されている
「【オーストラリア連邦予算案】経済見通し」に続く
■ソース
BUDGET STRATEGY AND OUTLOOK, BUDGET PAPER NO. 1(Budget 2024-25)
Budget Speech 2024–25(The Hon Dr Jim Chalmers MP Treasurer)