電気料金支援と家賃補助のインフレ押し下げ効果は「0.5ポイント」と政府
オーストラリア連邦政府が14日発表した2024-25年度(24年7月1日〜25年6月30日)予算案の経済見通しによると、実質国内総生産(GDP)の成長率は22-23年度の3.1%から23-24年度には1.75%まで落ち込んだ後、24-25年度2.0%、25-26年度2.25%と緩やかなペースで回復していくと見られている。
予算書は、世界経済の成長率が24年〜26年までの3年間、3.25%前後の低水準で推移すると予測。平均を下回る成長が続く期間が、1990年代初頭以来最も長くなると展望した。その上で予算書は「オーストラリアは世界経済の動向から逃れることはできない。依然として高水準にあるインフレと高い金利の組み合わせも、過去1年間の成長鈍化につながっている」と指摘した。
ただ、インフレ低下と労働市場の強さ、実質賃金が23年末にプラスに転換したこと、好調な民間投資などを背景に、「オーストラリア経済は、問題をうまく切り抜けることのできる好位置にある」とした。景気後退なしに成長を再加速させる「ソフトランディング」(軟着陸)が可能との認識を示唆した格好だ。
コロナ禍からの経済再開以降、オーストラリアをはじめ主要国の経済を疲弊させているインフレの先行きをめぐっては、従来よりも明るい見通しを示した。政府が昨年12月に発表した年央財政経済見通し(MYEFO)の予測と比較して「インフレ沈静化のペースは早まっている」と指摘。消費者物価指数(CPI)の上昇率が、今年末までに中央銀行・豪準備銀(RBA)のインフレ目標「2〜3%」の圏内まで下がるとの見通しを示した。
なお、政府は今回の予算案で発表した1世帯当たり一律300豪ドルの電気料金支援と、低所得者向けの家賃補助の増額について、「インフレ率を0.5ポイント引き下げる効果がある」と主張。これらの財政支出がインフレを押し上げる要因になるとの見方を否定している。
一方、雇用情勢は24-25年度以降に軟化し、失業率は26-27年度まで4.5%の水準を維持すると予測されている。ただ、これはコロナ禍前の水準を下回る水準となっている。
失業率は現在、緩やかに上昇しつつあるものの、歴史的な低水準を維持しており、労働需給は依然として引き締まった状態にある。ただ、インフレと高金利のダブルパンチによって家計は財布の紐を引き締めており、消費は減速している。24-25年度のオーストラリア経済は、政府の想定通りに景気が底を打ち、ソフトランディングを達成できるかが最大の焦点となっている。
「【オーストラリア連邦予算案】主な施策」に続く
■ソース
BUDGET STRATEGY AND OUTLOOK, BUDGET PAPER NO. 1(Budget 2024-25)