クイーンズランド州で8月から半年の期間限定 ホンネは選挙対策
オーストラリア北東部クイーンズランド州政府が運営する公共交通機関の料金が、いくら乗っても片道50豪セント（約52円）になる。同州のスティーブン・マイルズ州首相が26日、発表した。8月5日から半年間の期間限定で試行する。
対象となるのは、州営の交通公社「トランスリンク」がブリスベン、ゴールドコーストなどの州南東部圏内や地方都市内で運営する鉄道、バス、フェリー、ライトレール（路面電車）。ブリスベン空港を走る「エアリンク」などの民営交通は含まれない。
目的の1つとしては、生活コスト高騰に苦しむ家計を支援し、インフレを抑制することがある。非接触型ICカード「ゴー・カード」の運賃は現在、乗車距離によって8つのゾーンに分かれている。一番安い「ゾーン1」は片道3.55豪ドル、最も高い「ゾーン8」は同21.48豪ドルとなっている。これが一律50豪セントとなれば、オーストラリアでは日本と異なり、交通費は通常、被雇用者の自己負担となっているため、通勤距離が長いほど恩恵は莫大なものとなる。
州政府によると、例えばゴールドコーストのロビナからブリスベンに週4日、鉄道で通勤している人は、1週間当たりの交通費が現行の91.68豪ドルから4豪ドルに激減する。半年間で2,104.32豪ドル節約できるという。
州政府は「今年下期の交通費の消費者物価指数（CPI）と州全体のインフレを押し下げる効果がある」と指摘している。
もう1つの目的としては、自家用車から公共交通機関への移行を促し、道路の混雑を緩和することがある。州政府によると、1台のバスでクルマ50台、1編成の列車でクルマ600台をそれぞれ削減できるという。また、公共交通機関の利用者数は現在、コロナ禍前の水準を13％下回っており需要が戻っていない。州政府としては、今回の試行を機に、クルマ社会脱却を推し進めたい考えだ。走行時に温室効果ガスを排出しない電車への移行が進めば、温暖化対策の取り組みもアピールできるだろう。
ただ、最大の狙いは選挙対策と見て間違いなさそうだ。クイーンズランド州は10月26日に州議会（1院制、任期4年）選挙を控えている。マイルズ州首相の労働党政権は2日にも、1世帯当たり一律1,000豪ドル（約10万円）のエネルギー料金を補助すると発表したばかり。平均的な世帯で半年分の電気料金がタダになるという。これに続く交通運賃の「ほぼ無料化」は、大盤振る舞いにも程がある。マイルズ州首相か会見で述べた下記のコメントからは、再選を確実にしたい露骨な思惑が透けて見える。
「速くて運行頻度が高い公共交通機関を片道50豪セントで利用してもらうことで、半年間で数千豪ドルの節約が期待できます。より多くの人が通勤や通学にバスや鉄道を利用すれば、道路の混雑も緩和できます。私の政権は、（生活コスト高騰で）苦しんでいる州民に手を差し伸べ、クイーンズランドが抱える課題に取り組んでいきます」（マイルズ州首相）
■ソース
Miles plan to bust congestion: Public transport (almost) free（Premier The Honourable Steven Miles）
