11年の財務相在任は史上最長も、首相の夢かなわず
事実ならまさに晩節を汚した格好だ。オーストラリアの現地メディアによると、ジャーナリストに対する暴行の疑いが持たれていたピーター・コステロ元連邦財務相が10日、メディア大手「ナイン・エンターテインメント」の非業務執行会長を辞任した。コステロ氏は疑惑を否定していたが、事実上の引責辞任と見られる。
コステロ氏は6日、キャンベラ空港内を歩いていたところ、直撃取材してきた全国紙「オーストラリアン」記者のリアム・メンデス氏を振り払い、転倒させた疑惑が浮上していた。メンデス氏が撮影し、オーストラリアンが公表した動画によると、メンデス氏がコステロ氏に対峙した直後、地面に転がる様子が写っている。
動画を見る限り、コステロ氏がメンデス氏を殴るなど手を出したかどうかは分からないが、メンデス氏は「暴行を受けた」と主張した。一方、コステロ氏は「私とすれ違うと、彼は後ろ向きに歩き、広告のプラカードにぶつかって転倒した。私は殴っていない」と否定していた。
ナイン・エンターテインメントは、民放テレビ局ナイン・ネットワークを中核とし、地方紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」や経済紙「オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー」などを束ねる旧フェアファックス・メディアも傘下に置く。メンデス氏のオーストラリアンを発行するニューズ・コープ・オーストラリアとは競合関係にある。
新会長にはキャサリン・ウェスト副会長が昇格した。コステロ氏は「次の10年間に向けたビジョンの元で団結するために新しい会長が必要だ」と述べた上で、「業界のライバルによる攻撃を評価しない」とニューズを暗に批判した。
コステロ氏は1957年生まれの66歳。ジョン・ハワード元首相の保守連合(自由党、国民党)政権で96年〜07年の11年間、連邦財務相を務めた。財務相の在任期間は史上最長で、政権ナンバー・ツーの大物政治家だった。10%の財・サービス税(GST=消費税)導入を柱とする政権の税制・財政改革を支えた。ただ、ハワード氏との確執から、画策した首相禅譲を果たせないまま、07年の連邦選挙で下野。09年に政界引退した。政府系ファンドの役員や民間企業の要職などを経て、16年からナイン会長に就いていた。
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