出力2.9ギガワット 180万世帯に電力供給
オーストラリア連邦政府は15日、ニューサウスウェールズ州東部イラワラ地区の南太平洋上に、巨大な洋上風力発電所の建設海域を設定したと発表した。総面積は1,022平方キロと東京23区の約1.6倍に達する。
シドニーの南方約50〜100キロの海域に、風車を2キロ間隔で格子状に並べる。風車のサイズは、直径118メートルのプロペラを含めて全高268メートルを想定している。
稼働時の出力は、一般的な原発のおよそ3基分に相当する推計2.9ギガワット。約180万世帯に電力を供給できるという。ただ、出力が安定している原発などのベースロード電源と異なり、風力によって出力は上下する。
昨年9月に各地で説明会を開いて地域社会から意見を募った。その結果、風車の位置を海岸から少なくとも20キロ以上離すことにした。陸地からほとんど見えないようにし、景観に気を配った。コガタペンギンの生息地やミナミセミクジラの回遊ルートを避けるなど環境にも配慮。当初の構想と比べて総面積を約3割減らした。
政府は温室効果ガス排出削減目標を実現するため、再生可能エネルギー導入に力を入れている。全国の6つの海域で大規模な洋上風力発電所の建設構想を立ち上げている。このうち具体的な海域を設定したのは、イラワラが4カ所目。8月までに実現可能性調査の免許申請を募集し、環境影響評価や開発免許の交付などの手続きを経て、着工を目指す。
クリス・ボウエン連邦気候変動・エネルギー相は声明で「(製鉄業が盛んだった)イラワラは何世代にも渡ってオーストラリア経済の成長エンジンとなってきたが、今後はオーストラリアのクリーンエネルギーの未来をけん引していく」と述べた。その上でボウエン氏は「イラワラは再エネ、グリーン水素、グリーン製鉄(温室効果ガスを発生しない製鉄技術)によって、温室効果ガス排出実質ゼロに向けて中心的な役割を果たすとともに、数千人の雇用も新たに創出する」と意義を強調した。
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