経済や気候変動などの協力で合意
オーストラリア訪問中の中国の李強首相は17日、キャンベラでアンソニー・アルバニージー首相と会談した。会談後に発出した共同声明によると、両首脳は◇両国が政治体制などの違いを認識した上で協力する「包括的戦略パートナーショップ」(2014年締結)の再確認、◇2国間関係の安定化と発展のための首脳や閣僚、実務者レベルの定期的な対話の重要性、◇国連や世界貿易機関(WTO)、主要20カ国(G20)、アジア太平洋経済協力機構(APEC)、東アジアサミットなどの多国間枠組みの重要性、◇2国間の草の根交流の強化、などで一致した。
会談に先立ち両国政府は、教育・研究、気候変動、豪中戦略的経済対話、豪中自由貿易協定(FTA)の強化、文化面の交流促進などについて、合意文書(MOU)に署名。これらの分野で2国間協力を拡大する方針だ。
李首相は15日、昨年のアルバニージー首相の訪中に対する外交上の返礼の形で来豪した。南オーストラリア州アデレード、キャンベラ、西オーストラリア州パースを回り、18日に帰国する。
中国軍の挑発相次ぐ
豪中関係は2020年、当時のスコット・モリソン首相が新型コロナ発生源に関する独立した調査を中国政府に要求したことをきっかけに一気に冷え込んだ。中国はオーストラリア産の一次産品6品目に高関税をかけたり、通関を止めたりして輸入を禁止または制限して事実上の経済制裁を課した。
22年に中道左派の労働党が政権を奪回すると、次第に雪解けムードが熟成され、閣僚や首脳間の交流が再開。中国はこれまでにオーストラリア産の石炭や大麦、ワインなど経済制裁の大半を撤廃している。アルバニージー政権の対中スタンスは「合意できる点では協力し、合意できない点では協力しない」という是々非々だ。
オーストラリアなどの米国陣営と、中国・ロシアなどとの間でデカップリング(国・地域間の投資・貿易の規制、連動の解除)が進む一方で、豪中の首脳往来は関係改善を印象付けている。だが、アジア周辺では、作戦中のオーストラリア国防軍に対する中国人民解放軍の挑発行為が相次いでいる。
2022年5月には、南シナ海の国際空域で、中国空軍の戦闘機がオーストラリア空軍の哨戒機に異常接近し、進路上にレーダー探知を妨害するアルミ箔「チャフ」を散布する妨害行為があった。23年11月には、日本の排他的経済水域内で、中国海軍の攻撃艦がオーストラリア海軍のフリゲート艦にソナーを照射し、海中で作業中だった潜水士が負傷した。今年5月にも、黄海の公海上で、中国空軍の戦闘機がオーストラリア海軍のヘリコプター「MH-60Rシーホーク」の進路上に照明弾を発射するという危険な行為があったばかり。
表面上はにこやかに笑みを浮かべながら、テーブルの下では銃を構え合う。そんな国際政治のリアリティーが見て取れる。
■ソース
Agreements with China reflect renewed dialogue(Prime Minister of Australia)