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原発の封印、ついに解くのか!? オーストラリア最大野党が建設公約

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コスト明示せず実現性は不透明

 世界屈指のウラン輸出国でありながら、原発を封印してきたオーストラリアで、解禁の動きが出ている。最大野党の保守連合(自由党、国民党)は19日、国内7カ所に原発を新たに建設する構想を発表した。来年5月までに実施される次期連邦選挙の公約で、実現した場合は2035年までの発電開始を目指す。

 いずれも既に廃止またはいずれ廃炉となる石炭火力発電所の跡地に建設する構想だ。2カ所は小型モジュール炉(SMR)、5カ所は最新鋭の大型炉の建設を想定している。ただ、建設する原子炉の数や、予算については触れていない。候補地は以下の通り。

・リッデル石炭火力発電所(ニューサウスウェールズ州)

・マウント・パイパー石炭火力発電所(ニューサウスウェールズ州)

・ロイ・ヤング石炭火力発電所(ビクトリア州)

・タロン石炭火力発電所(クイーンズランド州)

・カリド石炭火力発電所(クイーンズランド州)

・ノーザン石炭火力発電所(南オーストラリア州、SMRのみ)

・マジャ石炭火力発電所(西オーストラリア州、SMRのみ)

「バランスの取れたエネルギー・ミックスを」

 50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を見据え、現在の労働党政権は30年までに電力の再生可能エネルギー比率を82%まで高める計画。これまでエネルギー源の主力だった石炭火力発電所は次々と廃止する。 

 原発に否定的な与党労働党が再エネに注力する一方で、保守連合は常に安定供給が可能な「ベースロード電源」として原発導入に舵を切る。保守連合は「より安く、よりクリーンな電力を24時間、365日安定して得るには、バランスの取れたエネルギー・ミックスが必要だ」と主張している。

 保守連合は声明で「高額な再エネ一辺倒の労働党政権の政策は失敗した。政権は35年までに温室効果ガス排出量を65〜75%削減するとしているが、電気料金がいくら上昇するかを示していない。30年の43%削減目標も達成不可能になっている」と指摘した。その上で「原子力エネルギーをオーストラリアに導入する時がやってきた」と強調した。

 保守連合は、労働党政権の再エネ導入計画には1.2兆〜1.5兆豪ドル(127兆〜158兆円)の巨額の予算がかかると批判している。ただ、保守連合も原発建設の費用や財源、コストパフォーマンスを示しているわけではない。原子力に対する国民の反発も根強く、実現の可能性は不透明だ。

 なお、連邦産業科学資源省によると、オーストラリアは世界最大のウラン埋蔵量を誇り、生産量も世界4位。現在、3カ所のウラン鉱山を操業中で、22-23年度には4,809トンを輸出し、8億1,200万豪ドルの輸出額を稼いだ。

 ところが、国内には、シドニー南西郊外に小規模な研究用原子炉があるものの、商業用の原発は1基もない。以前から保守勢力を中心に原発解禁の声はあがっていたが、具体的な公約を発表したのは今回が初めて。

■ソース

Australia’s Energy Future, Media Release(Liberal Party of Australia)

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