それでも手元に11億円以上残りそう
オーストラリア航空最大手、カンタス・グループは8日、アラン・ジョイス前最高経営責任者(CEO)に支払った退職時の報酬2,140万豪ドル(約20億5,000万円)のうち、926万豪ドル(約8億9,000万円)を剥奪すると発表した。ジョイス氏の手元には半分以上が残る計算になるが、不祥事が相次いだ時期に経営トップを務めた同氏の報酬に大鉈を振るうことで、落ちた信頼の回復に努める。
ジョイス氏に支払った長期インセンティブ報酬(2021年〜23年分)836万豪ドル相当の株式を100%没収する。加えて、22-23年度の短期インセンティブ報酬も33%に当たる90万豪ドルを削減する。一連のスキャンダルに責任を持つ現職または過去の役員についても、短期インセンティブ報酬を33%減らす。同報酬の削減幅は合計410万豪ドルに達するという。
カンタスをめぐっては昨年、いわゆる「幽霊フライト」問題が浮上。コロナ禍からの再開の混乱期にあった21〜23年にキャンセルしたフライトの航空券を販売して顧客を欺いたとして、オーストラリア競争消費者委員会(ACCC)が昨年8月、同社を連邦裁判所に提訴していた。今年5月にはカンタスが顧客側に巨額の賠償金を支払いことで合意していた。
また、カンタスはコロナ禍の20年に地上職員1,700人を解雇したのは違法だとして訴えられていた裁判でも、23年9月に連邦最高裁で敗訴していた。
ジョイス氏はこれらの責任を取る形で昨年9月、予定より2カ月早く失脚に追い込まれた。同氏は08年から15年間トップを務め、コロナ禍からのV字回復を果たした。だが、相次いだ不祥事で晩節を汚す形で退場を強いられた。
後任には、バネッサ・ハドソン氏が同社初の女性トップに昇格。リチャード・ゴイダー会長も今年10月に退任することが決まっており、経営陣の刷新を進めている。
■ソース
UPDATE ON FY23 EXECUTIVE REMUNERATION(Qantas News Room)