未開発用地の長期保有、新規参入拒む!?
オーストラリア競争消費者委員会(ACCC=エートリプルシー)は27日、スーパーマーケットを運営する大手企業の問題をめぐる中間報告書を発表した。市場の約3分の2を握る大手2社の寡占が、自由な競争を阻害している実態を改めて浮き彫りにした。
ACCCによると、オーストラリア国内のスーパー小売業界のシェアは、最大手ウールワースと2番手コールズの大手2社が合計67%を握る一方、3位のドイツ系アルディは9%、4位の卸売大手メットキャッシュが運営する独立系スーパーは7%にとどまる。大都市周辺のショッピングモールに入居しているスーパーは、たいていコールズとウールワースの2社。業務用ディスカウント店や日用品も販売するドラッグストアなども含めて業態が多様な日本と比べ、消費者の選択肢は非常に少ない。
ACCCは中間報告書で、企業や供給業者、消費者などから集めた意見書や市場調査の結果をまとめた。ACCCのミック・キーオ副会長は声明で、「ウールワースとコールズは、大差のない商品を同等の価格、同じようなロイヤルティー・プログラムで提供している」と述べ、寡占的な市場の構造が活発な価格競争を制限していると指摘した。
また、キーオ副会長は「(大手スーパーによる)『ランドバンキング』(未開発用地を取得して一体的に開発する手法)を指摘する意見書もあった」と新たな疑いも明らかにした。大手2社は数多くの未開発の土地を長期間にわたって保有しており、ACCCはこれが他社の新規参入を阻害していないかどうかも調べる方針だ。
中間報告書によると、ウールワースは110カ所、コールズは42カ所の未開発用地をそれぞれ所有している。これに対して、2001年にオーストラリアに進出したアルディは、同様の土地を13カ所しか持っていないという。
オーストラリアではこのところ、大手スーパーへの世間の風当たりが強まっている。急激なインフレに便乗して値上げしたり、有利な立場を悪用して供給業者や農業生産者に不利な条件を押し付けたり、といった経営手法がやり玉に上がる一方、決算では巨額の利益を計上している。生活コスト高騰に苦しむ国民には、大手スーパーが消費者や生産者を犠牲にして儲けていると映るのだ。
このため、連邦政府は今年初め、ACCCにスーパーの不正をめぐる調査委員会の設置を命じ、意見書の募集や関係者からの聴取、市場リサーチなどを行ってきた。ACCCは今回の中間報告書を経て、来年2月末までに最終報告書を公表する。大手スーパーの支配力が、消費者や供給業者にどのような経済的影響を与えているかを解明する。
この問題とは別に、ACCCは23日、不正な安売りキャンペーンを行っていたとして、ウールワースとコールズの2社を消費者法違反の疑いで連邦裁判所に提訴した。ACCCによると、2社は密かに値上げした商品を値下げして安売りと見せかけ、値上げ前より高い価格で販売するという手口で、組織的に消費者を欺いたという。
■ソース
ACCC Supermarkets Inquiry moves into next phase after hearing consumer and supplier concerns(ACCC)