金融緩和開始は年明け以降にずれ込みそう
オーストラリアでは、労働市場が依然タイト(需給がひっ迫しているさま)な状態にあることが明らかになった9月の雇用統計を受けて、年内の早期利下げへの期待が薄らいでいる。低い失業率は朗報だが、長引く高金利で変動金利型住宅ローンの支払い負担増に苦しむ債務者にとっては悪いニュースだ。
公共放送ABC(電子版)によると、英国系経済調査会社キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、アビジット・サーヤ氏は「今後数カ月間で失業率は次第に5%まで上昇するだろうが、労働市場が(予想されたよりも)はるかに遅いペースで軟化していることのリスクがはっきりしてきた」と述べた。
サーヤ氏は「労働市場が完全雇用(働く意思と能力を持つ人が全員雇用されている状態)に近いタイトな状態にある。雇用統計のデータから、豪準備銀(RBA=中央銀行)はこのように再認識するだろう」と語った上で、RBAが2025年1-3月期より前に利下げに踏み切ることはないとの見通しを示した。また、今回の金融緩和サイクルでの利下げ幅は0.75ポイント(1回の利下げ幅が通常の0.25ポイントの場合は3回)にとどまると予測した。
また、ロイター通信によると、オランダ系金融機関INGのアジア太平洋調査部門のトップを務めるロバート・カーネル氏も「RBAが2025年1-3月期の前に利下げを開始しないという私たちの読みに変わりはないが、この予測が野心的過ぎるかもしれない」と指摘し、利下げが4-6月期以降にずれ込む可能性にも言及した。
一方、年内利下げの予測を変えない識者もいる。ABCによると、著名エコノミストのギャレス・エアード氏(コモンウェルス銀)は「(10月30日発表の)7-9月期の消費者物価指数(CPI)統計では、RBAの想定よりも速くインフレが鈍化していることが示されるだろう。(7月施行の)所得税減税第3弾による消費刺激効果もRBAの予測より小さそうだ」とコメント。RBAが12月9〜10日に開く今年最後の会合で、0.25ポイントの利下げに踏み切るとの従来の観測を維持した。
■ソース
‘Red hot’ labour market could mean fewer rate cuts next year(ABC News)
Australia’s job machine extends strong run, 2024 rate cut bets fade(Reuters)