太陽光発電より安価で蓄熱できるのもメリット
大規模な商業用プラントとしてはオーストラリア国内初となる「集光型太陽熱発電」(CST)施設の建設工事が29日、南部ビクトリア州北部ウォドンガにある米ペットフード大手「マース・ペットケア」の工場で始まった。ペットフード製造時に必要なエネルギーとして利用する。2026年までの稼働開始を目指す。
集光型太陽熱発電と太陽光発電は、いずれも再生可能エネルギーである太陽光を利用し、温室効果ガスを排出しない点で共通しているが、発電のメカニズムが大きく異なる。太陽光発電は金属に光を当てて電子を得る「光電効果」を利用する。一方、太陽熱発電は太陽光を集めた熱で水などの液体を沸騰させ、その蒸気でタービンを回して発電する。
普及が先行している太陽光発電と比較して、太陽熱発電は低コスト、蓄熱によって太陽光が得られない夜間も発電ができる、といった利点があるとされる。逆に、広い土地が必要、日射量の多い地域しか向かない、日の出から発電できるようになるまで時間がかかる、といったデメリットが指摘されている。
太陽熱発電はいくつかの方式が実用化されているが、ウォドンガの施設は曲面の鏡の中央を通るパイプに集光し、液体を加熱する「パラボラ・トラフ型」。広い土地があれば安価に建設できると言われている。出力18メガワットで最大10時間蓄熱でき、現時点でペットフード製造に使用しているガスを50%減らせる。ガスの削減量は2,000世帯以上の年間使用量に匹敵するという。
マースは新発電施設の稼働により、2年後には同工場での再エネ比率100%を達成する計画だ。建設費は3,930万豪ドル(約39.3億円)で、このうち1,720万豪ドルを豪再生エネルギー庁(ARENA)による豪連邦政府の補助金でまかなう。
この日建設地を視察したアンソニー・アルバニージー首相は「信頼性の高い再生可能な熱源を獲得し、製造工程の脱炭素化を実現したいと考える企業にとって、集光型太陽熱発電が実現可能な選択肢となる」と述べた。その上で首相は、オフピークの時間帯に発電したエネルギーを蓄熱できるメリットを強調した。
■ソース
Investing in innovation, jobs and a future made in Australia(Prime Minister of Australia)