政府支出の伸びが低調な個人消費を相殺
オーストラリア経済は12四半期連続でプラス成長を続けているものの、直近の成長率は市場予測を下回る「悪いニュース」となった。エネルギー料金補助金や所得税減税第3弾(7月施行)で可処分所得が増えたことで景況感は上向き、足元の年末商戦も好調に推移していると見られるが、景気の反転にはまだ時間がかかりそうだ。
オーストラリア統計局(ABS)が4日発表した6-9月期(2024年第3四半期)の実質国内総生産(GDP)成長率は、前期比で0.3%増と前期(改訂値で0.3%増)と変わらず、事前の市場予測のコンセンサス(0.4%増=ロイター通信調べ)を下回った。前年同期比では0.8%増と同じく予測(1.1%)から下振れし、コロナ渦の20年9-12月期以降で最低の水準を記録した。
小幅なプラス成長が喜べないのは、このところずっと人口増加率を下回っているからだ。1人当たりのGDP成長率は0.3%減と7四半期連続でマイナスとなり、「パー・キャピタ・リセッション」(1人当たりの景気後退)が長期化している。日本と異なりオーストラリアは移民受け入れで人口が増加し続けているため、国富を実質的に増やすには、人口増加率(今年3月末時点で2.32%)を上回る成長を持続する必要がある。
統計の内容を見ると、政府の投資と支出が大幅に伸びたことでかろうじてプラス成長を維持した格好だ。6-9月期の公共事業投資は前期比6.3%増え、史上最高の水準を記録した。このうち政府部門の投資は防衛装備品の輸入や病院・道路の建設などで6.0%、州政府・公社の投資は、道路建設や再エネ事業が活発で8.3%、それぞれ増加した。社会保障手当てや電気ガス料金補助金などの政府支出も1.4%増となった。
一方、GDPの約半分を占める個人消費(家計支出)の伸びは前期比0%(前期は0.3%減)と回復が遅れている。ただ、補助金支給で電気ガス料金の支払いが減るという「数字のからくり」による影響も大きかった。
ABSは声明で「エネルギー補助金の支給により、支出が家計から政府へシフトした。また、家計の電気料金の支払いが減ったことが、他の項目の伸びを相殺した」と指摘した。春から初夏にかけて気候が平年より温暖だったことから服飾や靴への支出が好調だった。家賃やヘルスサービス、教育などの支出も堅調に伸びた。
■ソース
Australian economy grew 0.3 per cent in September Quarter(ABS)