米ハードロック買収の報道も否定
経営危機に陥っているオーストラリアのカジノ大手「スター・エンターテインメント」は、前身の「エコー・エンターテインメント」が2011年、ギャンブル大手「タブコープ」から分離して新規上場する形で発足した。15年のブランド再構築で現在の名称に変更した。カジノは海外の富裕層が巨額の賭け金を投じるインバウンド産業の魅力的な収入源だが、20年〜22年のコロナ感染拡大による国境封鎖で大打撃を受けた。
加えて、経済再開後の22年以降、裏社会のマネーロンダリング(資金洗浄)に関与した問題が浮上。ニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州のカジノ規制当局から厳しい追及を受けた。シドニーのザ・スターは、州政府が送り込んだ人物の下で営業を続けるという異例の事態に。
当局への罰金支払いや法令遵守のコストが膨れ上がり、22-23年度に24億4,000万豪ドル、23-24年度には16億9,000万豪ドルの巨額赤字をそれぞれ計上。24年には米外食・カジノ大手「ハードロック・インターナショナル」が買収を検討しているとの報道が出たが、同社は否定。有力な売却先も見つからないまま、経営状態が急速に悪化している。
最大手クラウンは外資が買収
オーストラリアのカジノ業界は、シェア1位のクラウン・リゾーツ(49.3%)と2位のスター(35.6%)の寡占状態にある(調査会社アイビスワールド推計=2024年)が、クラウンもコンプライアンス問題で大揺れとなり、外資に身売りした経緯がある。
クラウンはメディア王国を築いたパッカー一族の下で、オーストラリア最大のカジノIR「クラウン・メルボルン」などを運営していた。しかし、クラウンも22年に組織的な反マネーロンダリング法違反が認定され、その後、米投資運用会社大手ブラックストーンが買収していた。
「6つ星」とされるシドニー2軒目の最高級カジノ「クラウン・シドニー」が、ブラックストーンの下でようやくオープンにこぎつけたのは22年8月。高級ホテルやレストラン街、ブティックなどIR(統合リゾート)の他の施設は既にオープンしていたが、カジノの開業は当初の計画から約2年遅れた。
■ソース
Industry Report R9201 Casinos in Australia(IBISWorld)