薬局チェーン「ケミスト・ウェアハウス」、オーストラリアを代表する小売企業に!

SHARE

ドラッグストア業界に巨大再編のうねり

グラフ作成:©守屋太郎

 オーストラリアの薬局チェーン最大手「ケミスト・ウェアハウス」と、同2位で医薬品の卸売・流通も手がける「シグマ・ヘルスケア」の合併が正式に決まった。合併後の新会社は、オーストラリアの小売企業としては最大級の規模となりそうだ。公共放送ABC(電子版)によると、時価総額ベースではスーパー大手「コールズ」を上回る規模になるという。

 黄色と赤の派手なイメージカラーが街中でひときわ目立つケミスト・ウェアハウス。大人1人しか通れない細い通路の両脇に、商品をぎゅうぎゅうに詰め込んだ棚を所狭しと並べた店作りが特徴的だ。広い店舗が多いオーストラリアの小売業界では異様だが、効率的な運営と大胆なディスカウントで市場をリードしてきた。

 現在、「ケミスト・ウェアハウス」ブランドで540店舗、「マイ・ケミスト」ブランドで28店舗などを運営している。調査会社アイビスワールドによると、薬局市場のシェアは売上高ベースで26.9%と首位を走る(グラフ参照)。株式は2つの共同創業家が所有していて、上場していない。

 一方、シグマ・ヘルスケアは医薬品の卸売・流通を手がけるとともに、「アムカル+」などの薬局約500店舗も運営している。薬局市場のシェアは13.3%で2位につけている。シドニーのオーストラリア証券取引所(ASX)に上場している。

 新会社もシグマを継承する形で上場を維持し、ASXの時価総額上位200社で構成する主要株価指数「S&P/ASX200」の構成銘柄となる見通しだ。

2位以下軸にさらなる合従連衡も!?

 オーストラリアの薬局市場では近年、再編の動きが活発化している。医薬品卸売大手「EBOS」は18年、薬局チェーン「テリー・ホワイト」(現在約600店舗)を完全子会社化して傘下に収めた。

 また、小売チェーン大手「ターゲット」やホークセンター「バニングス」、オフィス用品店「オフィスワークス」、化学品、資源エネルギーなどを手がけるコングロマリット(複合企業)のウェスファーマーズは22年、薬局チェーン「プライスライン」(約470店舗)などを持つ医薬品小売・卸売大手「オーストラリアン・ファーマスーティカル・インダストリーズ」(API)を買収し、ヘルスケア市場に参入した。

 オーストラリアの消費者向け市場は、成熟するに従って上位の2、3社にシェアが集中し、寡占化が進む傾向が強い。周囲を海に囲まれた単独市場としては規模が比較的小さい上に、事業コストが高いため、小規模事業者が利益を出すのが簡単ではないこと、新規参入の障壁が高いこと、商慣習として会社の売買が活発であること、などが背景にあると見られる。

 合計約4割のシェアを握るケミスト・ウェアハウスとシグマ連合の新会社誕生を受けて、薬局業界も2位以下のEBOSのテリー・ホワイトや、ウェスファーマーズのプライスラインなどを軸に、合従連衡がいっそう加速する可能性がありそうだ。

■ソース

Why did the ACCC approve the Chemist Warehouse merger with Sigma Healthcare?(ABC News)

Industry Report G4271A “Pharmacies in Australia”, October 2024(IBISWorld)

SHARE
Google Adsense
[the_ad_placement id="single-new-bottom"]