日本企業も参画の水素ハブ建設事業
オーストラリア連邦政府が掲げる水素社会の未来に不透明感が漂っている。連邦政府は脱炭素時代の有力な輸出商品と位置付け、水素エネルギーの開発プロジェクトを主導してきた。有力な輸出先と想定される日本の企業も参画しているが、ここにきて官民の双方から撤退の動きが出ている。
連邦政府が水素エネルギーの生産・輸出拠点として、全国7カ所に建設を計画している「水素ハブ」。このうち、北東部クイーンズランド州中部グラッドストーンの「CQ-H2」プロジェクトをめぐっては、同州政府が3日、10億豪ドル(約958億円)の追加出資を取りやめると発表した。
クイーンズランド州では昨年10月の州議会選挙で、温室効果ガス削減に積極的な与党の中道左派・労働党が敗北した。政権を奪回した保守の自由・国民党は、採算性が低いことを理由に同事業から手を引くことを決めた。
関電も撤退表明
CQ-H2は、グラドストーンに水素製造プラントやパイプライン、気体の水素を極低温に冷却する液化施設、水素キャリア(常温で運搬が難しい水素を改質した物質)として有力視されるアンモニアの精製施設など、水素エネルギーの一大輸出拠点を建設する計画だ。
2029年に日本とシンガポール向けに出荷を始め、89億豪ドルの経済効果をもたらすという。クイーンズランド州営のエネルギー公社「スタンウェル」が水素製造を担い、丸紅、岩谷産業、川崎重工などの日本企業、シンガポールの企業も参画している。
ただ、グラッドストーン産の水素を火力発電に利用する計画だった関西電力は昨年11月、採算性が見込めないとして撤退していた。
他の水素エネルギー開発プロジェクトでも、オーストラリアの大手資源企業から撤退の動きが出ている。発電・天然ガス大手のオリジン・エナジーは昨年10月、東部ニューサウスウェールズ州のハンター地区の水素ハブ事業への参画を撤回した。石油・ガス大手ウッドサイド・エナジーも南部タスマニア州の再エネ水素事業から撤退している。
■ソース
Hydrogen projects in Queensland(Queensland Government)
CQ-H2: CENTRAL QUEENSLAND HYDROGEN PROJECT(Stanwell Corporation)
Statement regarding the Central Queensland Hydrogen Project (CQ-H2)(Stanwell Corporation)