米国第5位の鉄鋼メーカー「ブルースコープ」とは?
米国のドナルド・トランプ大統領が鉄鋼とアルミニウムに一律25%の関税を課すと表明したことを受けて、週明け10日のオーストラリア証券取引所(ASX)では、オーストラリア経済全体に悪影響を与えるとの観測から、主要株価指数「S&P/ASX200」は0.34%下落した。ところが、オーストラリアの鉄鋼最大手「ブルースコープ」の株価は、関税のニュースが伝わった午前の取引開始直後から上昇した。上げ幅は一時2%を超え、1.813%高でこの日の取引を終了した。
ブルースコープはメルボルンに本社を置き、シドニーのASXに上場するオーストラリア企業だ。本来、オーストラリアの鉄鋼メーカーにとってマイナス材料であるはずの「トランプ関税」で株価が上昇したのはなぜか? それは、事業のグローバル化を進めた結果、米国事業の存在感が高まったことから、関税がむしろ業績にプラスになるとの観測が強まったためだ。
関税政策でグローバリゼーションの時計の針を戻すトランプ政権だが、ブルースコープへの株式市場の評価が高まったのは皮肉な結果と言える。先の日米首脳会談では、日本製鉄のUSスティール買収をめぐりトランプ大統領と石破首相が「買収ではなく投資」というレトリック(表現)で合意したが、外国企業であろうと投資や雇用で「実利を取る」戦略なのだろう。
ブルースコープは2002年、世界最大の資源企業であるオーストラリアのBHP傘下の鉄鋼部門から「BHPスティール」として分離、独立。03年に現在の名称に改名した。04年には米鉄鋼大手バトラー・マニュファクチャリング、07年にはアルゼンチン企業が米国に持つ鉄鋼メーカー4社をそれぞれ買収するなど、M&A(合併・買収)を繰り返して米国事業の規模を拡大している。
ブルースコープは10日、声明で「30年間、米国への投資を続けており、最近も事業の取得と拡大に20億米ドルを投じた。米国で5番目に規模の大きい製鉄会社となり、4,000人の米国人従業員を雇用している」と米国への投資や雇用に長年貢献していることを強調した。その上で同社は「すべての貿易のルールと協定に従う。今後もトランプ政権とオーストラリア政府と協力しつつ、(関税に関する)さらなる詳細を待つ」と述べた。
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