「トランプ関税」25% オーストラリアへの打撃は鉄鋼よりアルミニウムの方が大きい!?

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裾野広いアルミ産業、対米輸出は約481億円

 米国のドナルド・トランプ大統領が25%の関税を課すと表明した鉄鋼とアルミニウムの関税25%のうち、鉄鋼への影響はオーストラリアにとってはそれほど大きくないと見られる。国連貿易統計によると、オーストラリアから米国への2023年の鉄鋼輸出額は2億3,751万米ドル(約361億円)あった。

 しかし、オーストラリアは原料の鉄鉱石では世界最大の輸出国であるものの、鉄鋼の生産と輸出の重要性は相対的に低下している。国際価格の下落や国内の事業コストの高騰で採算性が悪化し、高炉を相次いで閉鎖するなど鉄鋼生産が著しく縮小しているからだ。

 世界鉄鋼協会(WSA)によると、2024年のオーストラリア鉄鋼生産量は481万トンと世界28位。世界全体のわずか0.26%にとどまる。大規模な生産拠点は、オーストラリアの鉄鋼最大手「ブルースコープ」が東部ニューサウスウェールズ州ポート・ケンブラで稼働している高炉1基(年産約300万トン)を残すのみとなっている。

 一方、アルミニウムに関しては、オーストラリアへの打撃はより広範囲に及びそうだ。アルミニウムは、国内で採れる原料ボーキサイトを精錬して輸出する。米国地質調査所によると、オーストラリアのアルミニウム生産量は150万トン(23年)と世界で7番目に多い。

 ABCによると、このうち約10%を米国に輸出している。国連貿易統計によると、23年のオーストラリア製アルミニウムの対米輸出額は3億1,691万豪ドル(約481億円)あった。

 アルミニウム産業は、精錬に大量のエネルギーと手間がかかる裾野の広い製造業だ。業界団体「オーストラリア・アルミニウム評議会」によると、国内には大規模なボーキサイト鉱山が5カ所、ボーキサイトからアルミナ(酸化アルミニウム)を精錬する拠点が5カ所、アルミナからアルミニウムを精錬する拠点が4カ所ある。雇用者数は2万1,000人、経済波及効果は年間180億豪ドル(約1.7兆円)とされる。

■ソース

Australian Aluminum Industry(Australian Aluminum Council)

UN Comtrade Database

Total Production of crude steel(World Steel Association)

Aluminum(USGS)

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