少数与党、不安定な政権運営へ
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オーストラリアの次期連邦選挙(下院の全議席と上院の約半数を改選)は、憲法の規定により5月17日までに実施されるが、中道左派・労働党のアンソニー・アルバニージー首相はまもなく選挙の前倒し実施を発表すると見られている。全国紙「オーストラリアン」17日付が掲載した「ニューズポール」の世論調査によると、有権者が政権交代を織り込む一方で、労働党、保守連合ともに単独過半数を握るのは難しそうだという。
ニューズポールの二大政党別支持率と各党別支持率から算出される労働党のスウィング(前回選挙比の得票増減率)はマイナス3.1%。これをもとに選挙結果をシミュレーションすると、労働党は現有77議席から7〜8議席減らし、定数151議席の連邦下院で過半数76議席を割ることは確実と見られる。一方、保守連合も現有53議席から急増させて単独で過半数を制するのはハードルが高く、現状の支持率では難しいという。
このため、オーストラリアンは「これらの支持率が実際の選挙に反映された場合、最もあり得る結果はハング・パーラメント(どの勢力も過半数に達しない議会)だろう」と予測している。
労働党がグリーンズなど左派系少数勢力の閣外協力を得て、かろうじて政権を維持するシナリオが有力と見られる。議席数と閣外協力の組み合わせ次第では、保守連合が無所属議員らと連携して3年ぶりに政権交代を果たす筋書きもあり得る。経済やエネルギーなどの政策論戦次第で情勢が大きく変われば、過去の例からも、保守連合が地滑り的勝利を収める可能性が全くないわけではない。
どちらが少数与党となっても、不安定な政権運営を迫られることは間違いない。
オーストラリア連邦議会が直近でハング・パーラメントを経験したのは2010年8月の選挙後。前労働党政権のジュリア・ギラード首相(当時)は、労働党2期目の再選を目指した。副首相だったギラード氏は同年6月、党内の内紛でケビン・ラッド首相(当時)を引きずり下ろし、初の女性首相に就いたばかりだった。結果は下院で労働党、保守連合のいずれも72議席の同数となり、過半数の76議席を制することができなかった。
選挙から3週間以上の政治空白を経て、労働党はグリーンズ1人、無所属議員3人と閣外協力の協定を結んでようやく少数政権を樹立した。しかし、少数議員がキャスティング・ボートを握るハング・パーラメントの運営は混迷し、労働党内では権力闘争が激化した。13年の次の連邦選挙では、保守連合が地滑り的勝利と政権交代を果たしている。
■ソース
Majority in mood for change after just one term of Labor(The Australian)