「インフレとの戦い、勝利宣言まだ早い」とオーストラリア中銀総裁 追加緩和への期待に牽制球

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年内利下げは後3回、年末に3.35%とエコノミスト予測も

豪準備銀(RBA)のミシェル・ブロック総裁(Photo: Reserve Bank of Australia)

 高コストに疲弊しているオーストラリアの世帯や事業者にとって、中央銀行・豪準備銀(RBA)が18日に決定した利下げはささやかながら追い風となったが、今後はRBAがどこまで、どのくらいのペースで金利を引き下げるのかが焦点となる。

 ただ、RBAのミシェル・ブロック総裁は利下げ発表後の記者会見で「今日の(利下げの)決定は、市場が予想している将来の利下げを示唆するものではない」と述べ、追加利下げへの期待に釘を差した。

 また、ブロック総裁は「理事会は、今は引き締めをちょっと緩和する時だと判断した。私たちはまだインフレとの戦いに勝利を宣言することはできない」と発言。物価上昇圧力の封じ込めは十分に実現できていないとの認識を示した。

「引き締めのブレーキ緩めた」

 緩和に対する中銀の用心深い姿勢について、コモンウェルス銀の有力エコノミスト、ギャレス・エアード氏は、利下げによって「(金融緩和の)アクセルを踏み込んだというよりは、(引き締めの)ブレーキを緩めた」(ロイター通信)と表現した。

 エアード氏18日に発表した顧客向けの短信リポートで、次のような見立てを示している。

「RBAは年内に5月、8月、11月の3回の会合で0.25ポイントずつ利下げを行い、年内に3.35%まで引き下げるというのが、私たちの基本的なシナリオだ。しかし、今後数カ月間で労働市場が著しく悪化した場合、4月(RBAの次回会合)の追加利下げもあり得るだろう」

利下げテコに選挙戦突入か

 一方、中銀は金融政策の独立性が担保されているとは言え、5月17日までに実施される連邦選挙(下院の全議席と上院の約半数を改選)を目前にしたこの時期の利下げは、政局的な意味合いもおのずから大きくなる。

 与党労働党のジム・チャーマーズ連邦財務相は18日、「(借入額が)50万豪ドルの(金利変動型)住宅ローンを返済中の世帯は年間960豪ドルの節約になる」と今回の利下げのメリットを強調。「インフレ低下と賃上げ、低失業率を達成した」として労働党政権3年間の経済運営の成果を自画自賛した。インフレを抑制しながら景気後退を回避する「ソフト・ランディング」(軟着陸)も近いとの認識を示した。

 住宅ローン支払い中の世帯に現金をばら撒くのと同じ効果が期待できる利下げ。支持率が低迷する与党にとって追い風となるのか。アンソニー・アルバニージー首相は、近日中に選挙の前倒し実施を発表するとの観測が強まっている。

■ソース

Media Conference – Monetary Policy Decision(Reserve Bank of Australia)

Australia’s central bank cuts rates, cautious on further easing(Reuters)

RBA cuts the cash rate by 25bp in February, as expected(Commonwealth Bank of Australia)

Reserve Bank cuts cash rate(The Hon Dr Jim Chalmers MP, Treasurer)

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