引っ張ればレームダックに陥る恐れ

オーストラリアの次期連邦選挙は、最終期限となる5月17日投票まで3カ月を切った。現時点では3月9日公示(首相の要請を受けた連邦総督による選挙令状の発令)、4月12日投票の日程が有力視されている。ただ、このスケジュールでは、3月25日に予定している来年度予算案の発表が、選挙後に後回しとなる。予算案は通常、5月に発表するが、今年は選挙日程を考慮して3月に前倒ししていた。
この点について、20日付の全国紙「オーストラリアン」は、複数の労働党議員の話として「3月25日に予算案を発表する可能性はほとんどないかゼロ。4月5日または12日の投票日が好都合だ」と報じた。与党内には、予算案発表より早期選挙が優先する空気があるようだ。
予算案発表後にずれ込めば、最短で3月30日公示、5月3日投票となる。また、4月1日には、中央銀行の豪準備銀(RBA)が次回会合を開き、金融政策を発表する。ここで追加利下げを追い風にして4月6日公示、5月10日投票もあり得る。最終期限となる4月13日公示、5月17日投票という選択肢も、可能性はきわめて低いが全くないわけではない。
しかし、RBAが利下げするとは限らない上に、選挙実施を遅らせれば遅らせるほど、政権にはデメリットしかなくなってくる。オーストラリアの政界でも選挙実施を期限のギリギリまで引っ張れば、政権は「レームダック」(死に体)になると言われている。解散を引き延ばせば、日本の首相が求心力を失うのと同じ理屈だ。
アルバニージー首相にしてみれば、直近の利下げを追い風に早期選挙に打って出て、主導権を握りたいところだろう。
憶測が交錯する中、アルバニージー首相は煙に巻いている。首相は19日朝のラジオ番組で「今朝、ある人と話したんだけど、今週日曜日に私が選挙実施を発表すると信じ込んでいるんだ。みんな(投票日を)賭けているようだね」と冗談を述べ、23日に選挙実施を発表しないことを示唆した。これが本心なら、最も早い2月23日公示、3月29日投票は選択肢から消える。
予算案を発表するジム・チャーマーズ連邦財務相も19日、公共放送ABCのラジオ番組で、選挙実施発表は首相の専権事項だとした上で、予定通り3月25日の予算案発表に向けて「準備している」と述べた。
■ソース
‘Don’t use rate cuts as cover to buy votes’(The Australian)
Federal election 2025: Anthony Albanese bats away early election speculation(news.com.au)