オーストラリア一般開業医の無料診察、全体の9割に拡大へ

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予算8,000億円 11月施行目指す

表作成:©守屋太郎

 オーストラリア連邦政府は23日、一般開業医(GP=ジェネラル・プラクティショナー)の診察料無料制度「バルクビリング」を拡大する「メディケア」(国民健康保険)改革を発表した。5月17日までに実施される次期連邦選挙に向けた与党労働党の公約。再選を果たした場合、11月1日からGPへの政府の支援金を増額し、無料診察の拡大を促す。

 今後4年間で85億豪ドル(約8,000億円)の予算を投じ、無料診察のGPに支払う「バルクビリング報奨金」を増額する。同じく無料診察のGPに支給する「メディケア還付金」も一律12.5%増やす。報奨金とメディケア還付金の増加率は、医療サービスが行き届きにくい遠隔地で現行制度比最大2倍以上とするなど、地方を中心に大幅に引き上げる(表参照)。

 無料診察の割合(診察回数ベース)は昨年12月の時点ですでに77.5%と高水準にある。複数のGPが勤務するメディカル・センターなどでは無料診察が一般的だ。ただ、コストの高い自前の診療所や検査設備を持つGPの中には、報奨金やメディケア還付金だけで十分な利益が得られないことなどから、有料診察を続けているところもある。

 政府は改革により無料診察を採用する診療所の数を4,800軒と現行の3倍に増やし、無料診察の割合を2030年までに9割まで高める計画だ。患者が節約できる診察料は、同年までに年間8億5,900豪ドルに達するという。

 加えて、総額6億1,700万豪ドルを投じて医師・医療従事者の増員も図る。28年までに毎年GP候補生2,000人分の訓練費用を政府が負担し、看護師400人分の奨学金を増やすなど、医療現場の人手不足の解消を図る。

「メディケア創設以来最大の投資」と労働党

 アンソニー・アルバニージー首相(労働党)は近く次期連邦選挙の前倒し実施を発表する見通しだ。無料診療の拡充策を公約の目玉の1つと位置付け、中道左派の労働党らしい手厚い福祉政策を全面に押し出すことで、保守連合との違いを引き立たせる狙いと見られる。

 労働党は23日の声明で「アルバニージー政権が再選されれば、40年以上前のメディケア開始以来、最大の投資を行う」と強調。その上で、最大野党・保守連合(自由党、国民党)のピーター・ダットン代表(自由党党首)が2013〜14年の連邦保健相時代、メディケアの歳出を大幅カットしたことを強く批判した。

 選挙戦では「ダットン氏が首相になれば医療費が上がる」といったネガティブ・キャンペーンを張る可能性がある。

■ソース

Strengthening Medicare: More bulk billing, more doctors, more nurses(The Hon Mark Butler MP, Minister for Health and Aged Care)

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