「メディケア」と民間健康保険の二本立て

オーストラリアの国民健康保険「メディケアは」1984年、ホーク労働党政権が創設した。すべての国民と永住外国人を対象に、ベーシックな医療サービスを提供する「国民皆保険制度」だ。所得の2%を徴収するメディケア税(メディケア・レビー)を財源とし、一般開業医(GP)での診察、基本的な検査、公立病院での緊急治療などを全部または一部を補助している。
一方、民間健康保険は、私立病院での治療や個室での入院、救急車の料金、歯科、整骨などメディケア対象外の医療サービスを補完している。人口の半数以上がなんらかの民間健康保険に加入している。
政府機関「オーストラリア健全性規制局」(APRA)によると、民間健康保険の加入率は入院など病院での治療を含む「ホスピタル・カバー」が44.8%、病院での治療を含まない歯科や整体、足病科、視力・聴覚障害、鍼、メンタルヘルスなどを対象にした「ジェネラル・カバー」が54.6%となっている。
まずは一般開業医で診察、それから専門医へ
医療システムは、急病や重傷などの場合は拠点病院の緊急病棟に駆け込むが、そうでない場合はまず「かかりつけ医」のGPで診察を受け、高度な治療が必要な場合はGPが紹介する専門医(スペシャリスト)を受診する、というのがおおまかな流れだ。医療費最大3割負担の日本と異なり、診察料無料制度「バルクビリング」を採用しているGPの場合、タダで受診ができる。このため、経済的理由による「受診控え」を防げるというメリットがある。
ただ、GPの紹介状がなければ専門医に診てもらうことはできず、緊急でなければ専門医の受診まで予約から数カ月かかる場合がある。これは日本と比べて大きなデメリットと言える。「専門医の診察までに病気が悪化して手遅れになっていた」というケースもあるだけに、注意が必要だ。
専門医の検査や治療は、一定割合でメディケアが適応されるものの、無料ではない。近年はインフレや人件費高騰などで専門医の医療費は上昇しており、一概に言えないが初診料はおおむね400豪ドル程度かかる。このうち半分程度がメディケアで戻ってくるが、3割負担の日本よりも高額となるケースが多い。
■ソース
Quarterly private health insurance statistics(APRA)
What private health insurance covers(Department of Health and Aged Care)