連邦・州政府と空港会社が覚書

オーストラリア南部メルボルンの市内中心部と、北西郊外に位置するメルボルン空港(タラマリン空港)を結ぶ新鉄道「メルボルン・エアポート・リンク」の建設計画が、実現に向けてようやく動き出した。
オーストラリア連邦政府とビクトリア州政府、空港会社「オーストラリア・パシフィック・エアポーツ」が20日、新線の建設を推進する「了解覚書」(MoU)に合意した。3者は合同委員会を設立し、メルボルン西郊にある既存のサンシャイン駅の大規模改修と、同駅から空港駅までの新線の着工、既存線の輸送力増強に向けた作業を進める。
メルボルン市内中心部と空港間は、道路しかアクセス手段がない。鉄道の新線建設は古くから待望されていた。新線が完成すれば、市内中心部で今年開業予定の地下鉄「メトロ・トンネル」から、サンシャイン駅を経由し、空港まで10分間隔の高頻度で運行する。
新鉄道の所要時間は約30分とバスと変わらないが、利便性は大幅に高まる。既存の空港直通バス「スカイバス」は、渋滞で最大1時間程度かかる場合がある。2階建てで揺れがひどく、シートも狭いため快適性に欠ける。鉄道は定時運行が見込め、乗り継ぎがスムーズで、乗り心地も向上する。
当初の計画では、着工は2026年、開業は30年開業の予定だった。空港駅の設計などをめぐり連邦・州政府と空港会社が対立したため、着工準備が遅れていた。今後のスケジュールが順調に進んだとしても、開業は早くても33年までずれ込む見通しだ。
予算の工面はついている。アンソニー・アルバニージー連邦首相は2月、空港新線建設に20億豪ドル(約1,870億円)を支出すると表明。累計の予算額は70億豪ドルに達した。州政府もサンシャイン駅改修の予算を前倒しして拠出すると発表していた。
ただ、連邦選挙(5月17日までに実施)を間近に控えたこの時期の合意発表は、選挙対策の側面が色濃い。21日付のメルボルンの日刊紙「ヘラルド・サン」によると、空港駅の設計や用地買収、建設方法などの問題は依然として解決していないという。選挙を優先した「見切り発車」となる可能性も否定できない。
■ソース
AIRPORT RAIL IS GO(Herald Sun)