判定は玉虫色! 豪ウールワース、コールズのインフレ便乗値上げ、明確に認定できず

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独禁当局が最終報告書発表

 公正取引委員会に相当する「オーストラリア競争消費者委員会」(ACCC)は21日、スーパーマーケット業界の競争環境や価格設定などに関する最終報告書を発表した。一握りの大手の寡占が自由競争を阻害していないか、価格を不当に釣り上げていないか、買い手の強い立場を利用して供給業者に不利な取引を押し付けていないか、などを調査した。

 報告書によると、市場の競争環境については、ディスカウント・スーパーの独アルディの店舗網拡大が一定の競争を促進しているものの、ウールワースとコールズの地場の2社が売上高全体の7割近くを占め、寡占の度合いは非常に強いという。大手2社は、新たに出店する用地の確保においても優位な立場にあるとしている。

 物価上昇を利用して「大手スーパーが不当な利潤を得ているのではないか」との疑念については、ウールワースとコールズ、アルディの商品の利幅が過去5会計年度で上昇し、インフレや賃金上昇を上回る利益を確保していると指摘。世界の主要なスーパー大手と比較しても、3社の利益が非常に高い水準にあることも明らかにした。

 供給業者との関係については、買い手として強い力を持つウールワースとコールズが、生鮮食料品や一部の日用品の価格決定を実質的に支配していると認定した。

 消費者との関係については、ウールワースとコールズで購入する商品の半数以上を販促品が占めているとして、本当に買い得かどうかの判断を難しくしていると指摘。顧客を囲い込む「ロイヤルティー・プログラム」(ポイント・プログラム)で、消費者がいくら恩恵を受けているのかも不透明だとしている。

 こうした調査結果に基づいて報告書は、◇透明性を確保するためオンラインで価格を公表するシステムの構築、◇API(アプリとプログラムをつなぐシステム)を通したダイナミック・プライシング(変動価格)の導入、◇M&A(企業の合併・取得)の公平性を確保するための法整備、◇ロイヤルティー・プログラムの透明性確保など20の提言を発表した。

 オーストラリアの大手スーパーをめぐっては、コロナ禍後の激しいインフレに便乗して値上げを行い、巨額の利益を得る一方、消費者を苦しめてきたとの批判が巻き起こった。このため、連邦政府は昨年1月、ACCCに調査を要請。ACCCは約1年かけて調査を行い、441ページの最終報告書にまとめた。

 ただ、最終報告書は寡占を認めたものの、大手2社による不当な価格吊り上げを明確に認定するまでには至らなかった。

 このため、シドニーのオーストラリア証券取引所(ASX)では21日、ウールワース株は6.32%、コールズ株は4.85%それぞれ急騰した。市場は報告書の内容を玉虫色の判定ととらえ、2社の寡占は今後も安定して継続すると見ている。

■ソース

ACCC recommends supermarket reforms to provide better outcomes for consumers and suppliers(ACCC)

Supermarkets inquiry Final report(ACCC)

Supermarkets and Grocery Stores in Australia(IBISWorld)

Australian Securities Exchange

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