週50豪ドル手取り増やします! オーストラリア新年度予算案

SHARE

所得税減税、予算は4年間で1.6兆円

 オーストラリア連邦政府が25日発表した2025-26年度(25年7月1日〜26年6月30日)予算案。主な施策のうち、◇電気料金補助金の25年12月末までの延長(1世帯当たり150豪ドル=総額18億豪ドル)、◇処方箋薬負担上限額の25豪ドルへの引き下げ(7億8,460億豪ドル)、◇無料診療の一般開業医に対する補助金引き上げ(79億豪ドル)などは既に公表していた。しかし、選挙公約の目玉として予算案で初めて公表した所得税減税は「寝耳に水」だった。

 所得税減税の内容は、24年7月に施行した所得税制改訂第3弾の減税措置に加えて、年収1万8,201〜4万5,000豪ドル部分の税率16%を26年7月から15%に、27年7月から14%へと段階的に引き下げるというものだ。

 政府によると、この施策によって平均的な勤労者(年収7万9,000豪ドル)の納税額は、追加で26-27年度に268豪ドル、27-28年度に536豪ドルと段階的に縮小する。24年7月の減税前と比較すると、平均的勤労者の納税額は年間2,548豪ドル、1週間当たり約50豪ドル減るという。

 ただ、「1週間50豪ドル」は24年以降の累計の金額であり、政権側が減税効果を誇張した表現と言える。平均的な26-27年度の減税幅は1週間約5豪ドル、27-28年度は1週間約10豪ドルと1日1杯のコーヒーも買えない金額だ。追加の減税幅はさほど大きくないように見えるが、政府は今後4年間で総額171億豪ドル(約1.6兆円)の予算を計上する。

 巨額の歳出をめぐっては、批判の声も出ている。公共放送ABC(電子版)によると、オーストラリア商工会議所(ACCI)のアンドリュー・マッケラー代表は26日、予算案について「戦略とビジョンがない」と述べ、短期的な課題に集中するあまりに長期的な経済成長に資する計画に欠けると指摘した。

 一般的には財政規律を重んじる傾向が強いオーストラリア政府。ただ、どちらかと言えば、アルバニージー首相の労働党(中道左派)は伝統的に「大きな政府」を目指し、特に福祉の分野では財政出動に積極的だ。一方、最大野党の保守連合(自由党、国民党=中道右派)は、政府の介入を減らして自由競争を促す「小さな政府」を標ぼうする傾向が強い。

 労働党の所得税減税や補助金は選挙対策のばら撒きか。それとも国民生活を支える吉報となるのか。5月17日までに実施される次期総選挙で、有権者が判断することになる。

■ソース

Budget Paper No.1(Budget 2025-26)

ACCI criticises budget for lacking vision and small business support(ABC News)

SHARE
Google Adsense
[the_ad_placement id="single-new-bottom"]