ユダヤ人の集会を狙ったテロと断定

オーストラリア東部ニューサウスウェールズ州警察によると、シドニー東郊ボンダイ・ビーチで14日午後6時45分頃、銃乱射の通報を受けて警官隊が駆けつけ、午後9時前まで10人の死亡と11人の負傷を確認した。現場で容疑者2人のうち1人が死亡し、1人は重体となっている。
公共放送ABC(電子版)によると、午後11時30分までに死者数は12人、負傷者数は29人に拡大した。現場から近い市内東部セント・ビンセント病院には多くの負傷者が運び込まれ、「戦場と化している」(ABC記者)という。
現場はボンダイ・ビーチ北側にある公園。この日は1週間続くユダヤ教の祭「ハヌカ」の初日だった。地元のユダヤ人社会の集会が開催されていて、約1,000人が参加していたとされる。
オーストラリア政府はテロ事件と認定し、連邦警察と諜報機関のオーストラリア保安情報機関(ASIO)が連携して事件の真相解明を進めている。
アンソニー・アルバニージー首相は会見で「祝福の日であるハヌカの1日目にユダヤ系オーストラリア人が狙われた。悪魔の反セム主義(反ユダヤ主義)、テロリズムが我が国の心臓に突き刺さった。ユダヤ系オーストラリア人に対する攻撃は、全国民に対する攻撃だ」と述べた。
現場付近では駐車中の車内で即席爆発装置(IED)が発見されたが、警察の特殊班が除去したという。現時点で付近の住民に危険はないという。ただ、ボンダイ・ビーチに面した道路、キャンベル・パレードは封鎖されており、州政府・州警察は付近に近づかないよう呼びかけている。
ABCによると、事件から約5時間が経過した15日午前0時ごろ、事件現場周辺には規制線が張られ、警察の捜査が続いている。次の州警察の発表は15日朝に行われる見通しだという。
ABCが15日0時すぎに公開した映像では、通行人の男性が容疑者1人に体当たりして、ライフル銃を奪って武装解除する様子が写されている。アルバニージー首相は「同胞を守るために、躊躇なく自らの危険をかえりみなかった。ヒーローだ。勇気が多くの命を救った」と称賛した。
オーストラリア史上最大の銃乱射事件としては、タスマニア州で1996年に35人が死亡した「ポート・アーサーの虐殺」がある。この事件はテロではなく単独犯による無差別殺人とされる。今回のボンダイ・ビーチ銃乱射事件は、人種的ヘイトを動機とするテロでは史上最大規模となる可能性がある。
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