「花火と思ったら銃声だった!」 ボンダイ・ビーチ銃乱射テロ、犠牲者17人に拡大

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容疑者は過激派の親子!? 首相・州首相は銃規制の強化表明

シドニーのボンダイ・ビーチ。平和な海岸町で惨劇は起きた(Photo: Azucena Stelzer on Unsplash)

 シドニー東部ボンダイ・ビーチで14日夕に発生した銃乱射テロから一夜明けた15日朝、アンソニー・アルバニージー首相は「オーストラリアは決して分断と暴力、憎悪に屈しない」と国民に団結を呼びかけた。その上で首相は「国家を分断させようとする彼ら(テロリスト)を拒絶する」と強調。事件現場のシドニー東郊ボンダイ・ビーチを訪れ、犠牲者に祈りを捧げた。

 「最初は花火だったと思ったら銃声だった!」−−。事件発生当時、ボンダイビーチ在住の日本人男性は恐怖に慄いたという。州警察は「差し迫った危険はない」としており、テロ攻撃が波状的に続く可能性は低そうだが、現場のボンダイ・ビーチ周辺は今も規制線が張られ、交通規制が続いている。

 オーストラリア国内では、1996年にタスマニア州で35人の犠牲者を出した「ポート・アーサーの虐殺」以来最悪の大量殺人となった今回の事件。ニューサウスウェールズ州警察の発表と公共放送ABCの報道から、現時点で明るみに出ている情報をまとめた。

犠牲者、負傷者の数は?

 ニューサウスウェールズ州警察の発表(15日午後1時51分)によると、容疑者1人を含む14人が現場で、10歳少女を含む2人が搬送先の病院でそれぞれ死亡した。これまでに犠牲者数は16人、容疑者を含む死者数は17人に達した。犠牲者の年齢は最年少が10歳、最高齢が87歳となっている。

 また、病院に緊急搬送された負傷者42人のうち、6人は重体で生命の危険がある。警官2人を含む27人は様態が安定しているものの重傷を負い、病院で治療を受けている。

容疑者の素性は?

 容疑者は男2人。サジド・アクラム容疑者(50歳)は警察が現場で射殺した。もう1人のナビード・アクラム容疑者(24歳)は、重傷を負って病院に搬送され、警察の厳重な管理下に置かれている。

 ABCによると、2人は親子関係にあった。父のサジド容疑者は1998年に学生として来豪(現時点で出身国は非公表)し、現在はオーストラリア国籍を保持している。息子のナヒード容疑者はオーストラリアで生まれた。

 2人はシドニー西方ボニリグ在住だったが、事件直前はシドニー南西郊外キャンプシーにある1泊70豪ドルの民泊施設に滞在していたことが分かっている。州警察はボニリグの自宅とキャンプシーの滞在先を家宅捜索した。

犯行の動機は?

 連邦・州政府は発生直後にテロ事件と断定した。連邦警察、諜報機関「オーストラリア保安情報機関」(ASIO)、ニューサウスウェールズ州対テロ捜査チーム(JCTT)などと連携して、事件の真相解明を進めている。

 当局は現時点では捜査中であるとして、現時点では容疑者の犯行動機について口を閉ざしているが、イスラム過激思想に基づくユダヤ人に対するヘイトが背景にある可能性がある。

 息子のナヒード容疑者は、2019年以降、テロ組織「イスラム国」(IS)の関係者としてASIOがマークしていた人物だったことが明るみに出ている。

 2023年のイスラム武装勢力ハマスによるイスラエル攻撃に対するイスラエル軍によるパレスチナ侵攻を背景に、オーストラリア国内では、ユダヤ教の礼拝施設が攻撃を受けるなど反セム主義(反ユダヤ主義)の動きが強まっていた。

銃の管理に問題は?

 州警察はこれまでに現場から銃6丁、3つの即席爆発装置(IED)などの武器を発見し、家宅捜索先から銃2丁と証拠品を押収した。

 射殺された父のサジド容疑者は、銃ライセンスを保有しており、合法的に銃を保有していた。ASIOがマークしていたナヒード容疑者の父が、大量の銃を保有していたことは問題視されている。

 犯行に使用された銃器の詳細は公表されていないが、長距離から標的を狙えるライフルと見られる。ABCが銃撃の模様を撮影した映像を分析したところによると、事件発生当時、6分以内に100発以上の銃弾が発射された。

 ニューサウスウェールズ州のクリス・ミンズ州首相は15日、「私たちの社会で使用目的がない、これらの恐ろしい兵器の保有を難しくする」と述べ、法改正が必要との方針を示した。アルバニージー首相も、同日午後に開く各州・準州政府との合同会議で銃規制の強化について話し合うと表明した。

 オーストラリアでは「ポート・アーサーの虐殺」以降、殺傷性の高いライフルや自動小銃などの所有が厳しく規制された。今回の事件をきっかけに、銃規制がいっそう強化されることになりそうだ。

ボンダイ・ビーチってどんなところ?

 現場周辺のシドニー東部郊外は、シドニーの中でも富裕層が多い高級住宅街で、ユダヤ人社会の中心地としても知られる。

 ボンダイ・ビーチはシドニー市内中心部から東へ直線距離で約6キロと外洋に面したビーチとしては最も近場にある。白砂の海岸と南太平洋の青い海が特徴的で、世界中からの旅行者や地元市民、サーファーなどが集まる平和な海岸町となっている。

 欧米と比べて一般的に安全とされるオーストラリアの中でもシドニー東部郊外の治安はおおむね良く、真夜中に1人で外を出歩いても危険を感じることはまずない。

 ただ、ボンダイ・ビーチから西へ直線距離で約2.5キロに位置するボンダイ・ジャンクションのショッピングモールでは2024年4月、男が買い物客らを無差別にナイフで刺し、6人が死亡する事件が発生した。この事件は、精神疾患歴のある容疑者の単独犯行で、過激思想やヘイトに基づくテロ事件ではなかった。

■ソース

Joint Counter Terrorism Team to investigate mass causality public place shooting – Bondi(NSW Police Force)

LIVE – Bondi Beach shooting live updates: Five victims identified as PM visits scene of Jewish festival massacre(ABC News)

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