7月5日の豪準備銀理事会で
1日発表の2022年1〜3月期豪GDPは前年同期比3.3%上昇ーー。コロナ禍前の平均を上回る力強い成長が再確認されたことで、7月5日に開かれる次回の豪準備銀(RBA=中央銀行)の理事会では、「0.4ポイントの利上げ」(米通信社ブルームバーグ)もありうるとの見方が出ている。現時点の市場予想の中央値によると、今年12月末までに政策金利は2.7%まで引き上げられる可能性がある。
豪州経済は、コロナ感染拡大の影響で20年3月期と6月期の2期連続でマイナス成長を記録。91年以来実に29年ぶりとなるリセッション(景気後退=2期連続のマイナス成長)を経験した。コロナショックを最小限に食い止めるため、連邦政府は休業給付金「ジョブキーパー」や失業手当の大幅増額など手厚いコロナ経済対策を実施。RBAも政策金利を史上最低水準の0.25%まで引き下げるとともに、豪州では史上初となる量的緩和に踏み切り、市中に大量のマネーを供給した。
こうした連邦政府による財政出動と、RBAによる金融緩和の両輪をフル稼働したことが功を奏し、豪州経済はすでにコロナ禍前の成長軌道を回復している。
3月期CPIは前年同期比5.1%上昇
ところが、財政支出と金融緩和による金あまりや、コロナ禍のサプライチェーンの目詰まり、世界的なコモディティー価格の高騰、ロシアによるウクライナ侵攻などを背景に、インフレ圧力が拡大。3月期の消費者物価指数は前年同期比5.1%上昇した。極端な物価変動を除く「トリム中央値」も3.7%の上昇となり、RBAのインフレターゲット「2〜3%」を大幅に上回っている。
このため、物価の安定を図るRBAは今年に入り金融引き締めに舵を切り、2月には量的緩和を停止。5月には11年半ぶりに利上げに踏み切り、政策金利を0.25ポイント引き上げて0.35%としたばかり。
経済運営が試される労働党新政権
すでに物価上昇は実質賃金の伸びを上回るペースで加速している。豪州人の所得や貯蓄は実質的に目減りしており、金融引き締めによるインフレの鎮静は待ったなしだ。ただ、急速な利上げは、消費を冷え込ませるだけではなく、持ち家率が高く金利変動型住宅ローンが主体の豪州では家計の負担増大につながるため政治的にマイナスの影響が大きい。
RBAはいかにインフレ圧力を抑制しながら景気の「ソフトランディング」(軟着陸)を実現できるか。慎重な金融政策の舵取りを強いられている。同時に、9年ぶりの政権交代を果たしたばかりのアルバニージー首相率いる労働党政権も、経済政策の手腕が試される。
■ソース
Australia’s Solid Economic Momentum Suggests Faster Rate Hikes (Bloomberg)