ハネムーン鉱山再開の背景に価格上昇
南オーストラリア(SA)州のハネムーン鉱山の操業再開が決まった。背景にはウラン価格の上昇がある。価格は福島第一原発事故後に低迷していたが、ここにきて世界的なエネルギー需給のひっ迫の影響で高騰。豪州のウラン開発を後押ししている格好だ。
公共放送ABC(電子版)によると、核燃料の原料となるウランの指標価格は現在、2021年初頭から2倍以上に上昇。ハネムーンは十分に利益が出せると判断した。
1970年代に発見されたハネムーンのウラン鉱床は09年に開発が始まり、11年に生産を開始した。しかし、その後のウラン価格の下落により13年に操業を停止していた。
今後も価格は上昇していくと予測されている。豪連邦産業・科学・エネルギー資源省によると、米ドル建てのスポット価格は2027年までの5年間、年間平均で実質4.2%上昇する見通しだ。
豪ウラン埋蔵量は全世界の3割超
80年代から90年代初頭にかけて、豪州では反核運動や先住民の土地権闘争が活発化。ウラン鉱山開発も政治的な論争となった。ハネムーンも80年代、抗議活動の舞台となった。
現在、シドニー南郊ルーカス・ハイツに小規模な研究用原子炉が稼働しているものの、商業用の原発は国内に1基もない。原子力以外のエネルギー資源に恵まれ、国民の反対も根強いためだ。たびたび原発導入の議論は浮上しているものの、具体化している構想はない。
ところが、豪州のウラン生産量(6,213トン=2020/21年度)は1位カザフスタン、2位カナダに次いで世界で3番目に多く、ほぼ全量を輸出している。ただ、現在、国内で操業中のウラン鉱山は、世界2位の生産量があるSA州のオリンピック・ダム、同州のフォー・マイルの2カ所に限られている。
また、豪州の埋蔵量は全世界の約31%と最大だ。SA州や西オーストラリア(WA州)、北部準州、クイーンズランド(QLD)州では、多数の手つかずの鉱床が確認されている。開発企業が権益を有している未開発の鉱床が多い。
ハネムーンを所有するボス・エナジーのクレイブCEOは「豪州は世界のウランの7.5%しか供給していない一方で、埋蔵量は世界全体の約3分の1を有している。膨大な埋蔵量が眠っていて、莫大なチャンスがある」と述べた。
■ソース
Resources and Energy Quarterly March 2022 (Department of Industry, Science, Energy and Resources)
Production to recommence at Honeymoon uranium mine in South Australia’s outback (ABC News)