ロウ豪準備銀総裁、講演で悲観論を否定
中央銀行の豪準備銀(RBA)のフィリップ・ロウ総裁は21日、シドニーで行った講演で、豪州経済が近くリセッション(景気後退=2期連続のマイナス成長)に陥る可能性は低いとの認識を示した。物価上昇率は年末に7%に達する可能性があるものの、家計や企業活動が好調で、経済の基礎的要因は力強いという。同日付の公共放送ABC(電子版)が伝えた。
ロウ総裁は、直近3月四半期に前年同期比5.1%上昇した消費者物価指数(CPI)について、今年12月までに7%に達する可能性があると指摘した。世界的なエネルギー価格の高騰を受けて、国内のガソリン価格は高値圏にある。また、豪東部でエネルギー供給がひっ迫しているために、新年度が始まる7月から電気・ガス料金の大幅な値上げも想定されている。
RBAは5月、インフレ圧力を抑えるため、2010年11月以来12年ぶりとなる0.25ポイントの利上げに踏み切った。コロナ禍の空前の金融緩和を巻き戻し、金融引き締めへと舵を切った。翌6月には、異例の0.5ポイントの追加利上げを行い、政策金利を0.85%とした。RBAは金利の操作を0.25ポイント刻みで実施するのが通例で、0.5ポイントの利上げは2000年2月以来実に22年ぶりだ。
RBAは当面、利上げを継続する見通しで、「政策金利は年末までに2.1%まで引き上げられ、来年に2.35%でピークアウトする」(ウエストパック銀)との予測が出ている。
インフレを放置すれば経済に大打撃となるが、急速な利上げもまた景気を冷え込ませる要因となる。物価の安定と雇用の最大化を責務とする中銀は、インフレを抑制しつつ成長を持続させる「ソフトランディング」(軟着陸)を図っている。
インフレ目標に落ち着くまで約2年かかる
だが、エコノミストの間ではインフレとリセッションが同時進行する「スタグフレーション」の到来を予測する声も高まりつつある。
こうした景気後退論について、ロウ総裁は「リセッションが近々あるとは考えられない」と否定した。「豪州経済のファンダメンタルズ(基礎的要因)は力強く、家計の収支も素晴らしい。企業もかつてないペースで人材を採用している」と述べ、現状ではインフレや金融引き締めが成長の足を引っ張っていない、との認識を示した。
また、同総裁は、交易条件(輸出価格を輸入価格で割った指数。公益条件の向上は、一般的に国が貿易で稼ぎやすくなっていることを意味する)が記録的な高水準にあることも豪経済にとってプラス要因と見ている。
世界的なコモディティー(商品)価格の高騰で、豪州の資源輸出が潤っていることが背景にある。
「高い公益条件は私たちの国民所得を大幅に増やしている。(景気には)数多くのポジティブな要因がある」(同総裁)
その上で、同総裁は物価上昇率(RBAが指標として重視する「トリム中央値」は直近で3.7%)がインフレ目標の2〜3%まで下落するまでには、「まだ2年程度かかる」との認識を示した。
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